有田、九谷、波佐見、土岐（美濃）、萬古は中止・延期に
国内の発生から１年以上が経過した新型コロナウイルス感染症の猛威がいまだに止まらない。３月上旬までは新規感染者数減少を背景に経済活動が元に戻る兆しも見られ、陶磁器業界でも春の陶器祭りや見本市の実施予定が明らかになったが、３月下旬からは感染が再度急拡大。一部の陶産地ではゴールデンウイーク中に予定していた陶器祭りを急遽中止または延期とすることを決めた。
全国の陶器祭りの中でも有数の集客数を誇る「有田陶器市」を主催する有田商工会議所は4月13日、今年の開催を中止すると発表した。同会議所は３月30日、「第117回 有田陶器市」を例年と同様の日程（4月29日～5月5日）で、感染防止対策や規模縮小の上で実施する方針を明らかにしていた。4月に入ってから東京や大阪を中心に感染症が再び急拡大したことを受け、有田商議所会頭で有田陶器市委員会の深川祐次委員長をはじめとする業界団体の代表らと松尾佳昭有田町長が13日に改めて協議し、やむなく開催中止を決めた。長年続く同陶器市の歴史の中で、異例の2年連続の中止となる。その一方で、昨年初開催したウェブ版陶器市「第2回Web有田陶器市」は予定通りの会期で開催する。
有田焼産地に続き、九谷焼産地で5月2～5日に予定されていた「第112回九谷茶碗まつり」の延期が4月16日に発表された。同まつりは3月30日の時点で、会場を九谷陶芸村、寺井体育館、根上総合文化会館、能美市内店舗などに分散する形での開催を明らかにしていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の状況を鑑みて、4月16日に開かれた「九谷茶まつり臨時奉賛会」で開催延期を決めた。延期先は9月の連休としているが、感染状況に応じて慎重に判断するとしている。
有田焼産地に近い波佐見焼産地で予定されていた「第62回 波佐見陶器まつり」も、4月20日に開催延期が発表された。同祭りは早々に特設サイトが開設され、徹底した感染防止対策を講じるための「コロナ対策協力金」を徴収するという新たな方針を打ち出していたが、長崎県の感染段階が「ステージ3」に移行し、県下全域に警戒警報が発令されたことなどを受け、やむを得ず延期することを決めた。この延期による今後の開催については、感染症の状況を鑑みながらイベントの開催を企画、検討するとしている。
有田陶器市とともに日本三大陶器祭りと称される「第45回 土岐美濃焼まつり」も、4月23日に開催中止を発表した。同祭りはこれまで、例年と同様に5月3～5日を会期として感染防止対策も含めて開催の準備を進めてきたが、予想以上の感染症拡大の状況に対して来場者や出店者の安全確保が困難などと判断し、やむを得ず中止を決めた。その一方で、「web土岐美濃焼まつり」は予定通り4月28日にオープンする。織部ヒルズホームページ（https://www.oribe-hills.com/）からアクセスできるようになるという。
26日には四日市萬古焼産地で恒例の「ばんこ祭り」も中止が発表された。例年は萬古神社周辺の路上を歩行者天国にして開催するところ、今年は感染症防止対策を目的に市内の四日市ドームで「四日市ばんこ祭りIN四日市ドーム」（５月８、９日）として開催予定だったが、三重県が「まん延防止等重点措置」適用を政府に要請することから、やむを得ず開催見合わせを決めた。
すでに開催した春の陶器祭り
一部の陶器祭りが中止・延期に変更となる一方で、すでに開催した陶産地もいくつかある。美濃焼産地の「第74回 たじみ陶器まつり」が4月10日、11日、2年ぶりに開催された。従来は多治見市本町オリベストリート周辺に集約していた会場を、来場者が密になることを避けるために市内近隣に分散させた上で、各所では検温と手の消毒コーナー設けて感染防止対策を徹底した。また同祭りは、会場での開催と合わせて初のオンライン会場「たじみ陶器まつりオンライン」（https://minoyaki.online/）も開設。こちらは5月9日まで1カ月の会期とし、多治見市からの支援を受けて送料無料にて販売している。
4月17、18日には瀬戸焼産地で恒例の「第60回 せと陶祖まつり」が名鉄瀬戸線・尾張瀬戸駅周辺および市内一円で開催された。例年は初日に行われる恒例の「御物奉献行列」は、今年は2日目に実施。瀬戸焼の陶祖・加藤四郎左衛門景正（通称・藤四郎）を祭った深川神社の陶彦社（すえひこしゃ）に「陶物（すえもの）」を献上するために、業界関係者らが裃（かみしも）や巫女姿で尾張瀬戸駅前から深川神社境内までを練り歩いた。
4月26日現在、「第40回 笠間の陶炎祭」は以下の通り開催予定となっている。数多くの感染症対策を講じているほか、緊急事態宣言等の対象地域やまん延防止等重点措置適用地域の在住者には、来場を控えるよう訴えている。
開催予定が急遽変わる場合は、変更が明らかになり次第、本記事で逐次最新情報を伝える。
