九州発!田中ゆかりのテーブル通信[82]9月:長月の茶会

抹茶、菊酒、栗大福

 先月より相次ぐ大雨の被害に驚いている間に、いつしか私の「夏休み」も終わってしまいました。静岡の旅からから帰り着くと、自宅には悪天候の爪あとが残っていました。玄関のそばでは、大切に育てていたプルメリアの大鉢が倒れています。背丈は私より高いずっしりとした植木なのですが、強風に吹かれて倒れたのだと思われます。その巻き添えをくらったのか、すぐ隣の植木鉢も無残に割れています。40年ほど前に購入したもので、引っ越しも共にしてきたお気に入りナンバーワンの陶器の鉢で、父との思い出もたくさんありましたので、あまりのショックで片付ける気力もなく、しばらく放置していました。庭の奥の方ではユズやブルーベリーが水不足で瀕死の重傷となっていました。朝夕の自動灌水を設定していましが、8月の猛暑の下では水が足りなかったようです。何とか仕切り直しをしなければと思いつつも、仕事と雑用に翻弄されながら、夏の疲れも手伝って意欲を失っていました。

  9月14日のことです。庭でロベリーニというヤシの木の植え替えをしていた夫が「ゆかり!早く早く!!」と叫んでいます。何事かと思って近寄り、夫の指さす方向に目をやると、あの行方不明になっていたアマガエル「ケロ彦」が!よ~く見ないとわからないところ、枯れたヤシの木の先端部分にいました。しかも、変身していたのです。あの鮮やかな緑色から、こげ茶の木の色に!!!ひょぇ~。調べてみたところ、ケロ彦はニホンアマガエルのようです。環境によって体の色が変わることがわかりました。下の写真がその姿です。「今までどこにいたのか」と思っていましたが、背景と同じ色になって気づけなかっただけで、実際のところケロ彦は行方不明ではなく、お庭にずっといたのかもしれません。単純な私はケロ彦との再会により少し元気を取り戻したのでした。

 気を取り直して気づくと、8月末から天気の悪い日が続いて急に気温が下がりました。夜になり窓を開けると、どこからか涼しい風が入ってきます。耳をすませば虫の声も聞こえてきます。秋がやってきたのですね。美しく奥深い秋の始まりです。

 今月は秋の始まりを喜ぶお茶会です。庭では、猛暑の影響で飾れる花は初夏から暑さを耐え抜いたトレニアぐらいしかありません。どうしようか困っていたところ、ある花屋の店先にクリの枝を見つけました。可愛い実がついています。このクリをお花に見立てて、花器の代わりに大分県産の竹ざるに飾りました。黒いはつり盆は大倉達雄氏作、そして有田焼、草山窯の青白磁唐草彫大杯に菊の花びらを浮かべ菊酒を。大杯はお祝いや節目の時などに用いると、いかにも気分が良いですね。9月9日は重陽の節句、無病息災や長寿を願って菊酒をいただきます。昔はこの日、宮中で重陽の宴が催され菊酒がふるまわれていたそうです。抹茶碗は唐津焼、藤ノ木土平氏作、朝鮮唐津碗です。おおらかな手取り感がとても気に入っています。

 お菓子は季節もの栗大福です。唐津焼、中里太亀氏作、焼締木甲型鉢に盛ってみました。ちょうど見込みのところが赤く美しい緋襷(ひだすき)になっていて、存在感があり大変盛り映えのする器です。秋から冬にかけて、よく使う鉢の形状は浅型から深型へと変わっていきます。季節の移ろいを器で表現するなんて、日本の器の奥深いところですね。取り箸は器の雰囲気に合わせて煤竹(すすたけ)にしてみました。新鮮な栗をあんこで包んだ大福は本当に口福(こうふく)の味でした。久しぶりに味わうお抹茶の美味しいこと。夏の疲れが癒されます。

テーブルでお抹茶、気軽なお茶会の提案です。あなたも一服いかがですか?

メニュー抹茶(小山園・幸の白)、菊酒、栗大福(口福堂)
器 青白磁唐草彫大杯 草山窯(有田焼)
朝鮮唐津碗 土平窯・藤ノ木土平(唐津焼)
焼締木甲型鉢 隆太窯・中里太亀(唐津焼)
カトラリーほか 煤竹箸 山下工芸(大分県)
竹フォーク(菓子用) 山下工芸(大分県)
竹ざる 山下工芸(大分県)
黒はつり盆 大倉達雄(静岡県) メーカー(場所)