九州発!田中ゆかりのテーブル通信[81]8月:海の町にて

サラダ仕立てのイカのカルパッチョ、レモン風味、マグロのタルタル、白ワイン

 読者の皆様もご存じのとおり、7月28日16時27分ごろ熊本地方を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生しました。その頃私は、長崎県波佐見町の永峰窯さんのショールームにいました。来年1月に開催される「テーブルウェア・フェスティバル」に向けて、今年初めての商品開発会議に臨んでいました。同席していたアドバイザーの先生や窯業技術センターの職員の方々の携帯電話が一斉に警告音を発し、一体何事かと立ち尽くしていると、急にガタガタと揺れ始め、やっと地震だということに気が付きました。その揺れがしばらく続いておさまった後、震源地を調べると熊本県だということがわかり、「長崎県の波佐見町でこれだけ揺れたのだから熊本の方は相当ひどいのでは」と案じていたところ、報道で知った惨状は予想以上でした。胸が痛みます。

 永峰窯さんのショールームや工場にはたくさんのやきものが並んでいましたが、幸いなことに一つも割れることなく済みました。それでもその時の大きな揺れには、思い出すだけで今でも冷や汗が出そうです。また、8月13日から14日にかけて千葉県で線状降水帯が発生しました。この記録的な大雨による甚大な被害には驚くばかりです。地震や大雨が発生しなければ、いつも通り平安な日常を送ることができたはずです。亡くなられた方や被災された方に心から、お悔やみとお見舞いを申し上げます。

 さて、今月は3週間ほど静岡県に滞在しています。夫がウィンドサーフィンをしに御前崎に行くので同行しました。野暮用もたくさんありましたので。滞在しているのは海に面した田舎の町で、新鮮な海の幸が豊富なところなので、スーパーや魚屋さんを見て歩くのが楽しみです。ちなみに私の地元の福岡県や佐賀県が面しているのは玄界灘、つまり日本海ですが、こちらはそれに対して太平洋。海の色の青さやとてつもなく広い水平線、また採れる魚も違います。特に驚いたのは、カツオの刺身が大量に売られていることです。地元の人はカツオを刺身で食べるのですね。九州では主に「タタキ」にして食べます。カツオの刺身は、これまでの経験では生臭さが気になることが多く、手が出なかったのですが、ここに来て初めて刺身を食べてみて、あまりの美味しさに驚きました。また先日は、夫の友人の漁師さんに「生シラス」をパックに山盛り頂戴してしまい、生シラス丼や釜揚げ、はたまたお吸い物まで堪能させていただきました。

滞在した町から。朝焼けの光に浮かぶ富士山

 今回は地元のスーパーで仕入れたイカとマグロの料理をしました。合わせる器は、昨年11月の「テーブルウェア・フェスティバル」にて初めてお披露目された、西海陶器のブランド「essence(エッセンス)」の「agasuke(アガスケ)」シリーズの新商品です。「essence」はデビューして20年経ち、多くの方に愛用されているブランドで、その中でも「agasuke」は端正な美しい形とシンプルさで飽きのこない器の定番です。「アガスケ」とは「カッコつけ」という意味の東北の言葉だそうです。そう言われてみると、このシリーズは「カッコつけ」というイメージかもしれませんね。お皿の雰囲気を壊すことなく、見込み部分に銀を塗り、よりリッチな感じに仕上がっています。見る角度により銀色にきらめく美しい器、暑い夏には涼感も演出できるのではないでしょうか。この銀彩のため、電子レンジには使用できません。また、空気に触れていると変色することもあるので時々磨いてあげることも重要です。手間はかかりますが、大切に長く愛して使っていきたいと思います。合わせるカトラリーはデンマーク・ダンスク社のトルンです。流れるような曲線美に、ほど良い重量感があり、持ちやすく洗練されたデザインが高く評価され、ニューヨーク近代美術館にも展示されています。長年の私のお気に入りです。

 28センチの平たいスーププレートには、サラダ仕立てのイカのカルパッチョ・レモン風味をカッコつけて盛りました。19センチのサラダボウルには冷たいビシソワーズも良いけれど、銀のきらめきを見映えさせるためにマグロのタルタルにしました。夏はできるだけ火を使わない料理をしたいものです。盛り付けた後、一旦冷蔵庫に入れて冷やすと、味が締まって美味しいですよ。テーブルに敷いたクロスは数年前、どこかのハワイ雑貨店で仕入れたもの。ダイヤモンドヘッドをバックにサーフィンを楽しむ若者の様子を描いた麻布です。左下には、パトリック・チンというホノルル生まれのアーティストのサインが入っています。そのクロスをバックにお花を飾ってセッティングし、夏の思い出に。

 では、おつまみを2人で取り分けながら、冷た~い白ワインを。1杯のつもりが、あら、2杯になっちゃいました。夫は飲めないのでその分も私がいただきましょう。野ユリは夫が海の帰りに見つけて摘んできてくれました。優しいところもあるのですよ~。メインのお料理はしばらく出てこないようです。グビッ。

 ではまた、来月お会いしましょう。

メニューサラダ仕立てのイカのカルパッチョ、レモン風味、マグロのタルタル、白ワイン
agasuke 銀彩スーププレート 西海陶器(波佐見焼)
agasuke 銀彩サラダボウル(S) 西海陶器(波佐見焼)
agasuke 銀彩 プレート22センチ 西海陶器(波佐見焼)
グラス 不詳
カトラリーフォーク ダンスク(デンマーク)
野ユリ
花入れにしたグラス マウイブリュワリー(ハワイ)
クロス麻布 パトリック・チン(ハワイ)