九州発!田中ゆかりのテーブル通信[18]3月:テーブルでお花見・花の器を集めて

上から右へ、タラの芽の天ぷら、菜の花の辛し和え、ひじき炒め煮、ワラビの含め煮、ラディッシュの酢漬け、ワケギぐるぐる、かまぼこ、アサリのさっと煮、ツクシの素揚げ、日本酒

 九州とはいえ2月は大雪が降り寒い寒いと言いながら暮らしていましたが、やっと梅が咲いたと思っていたら、いつの間にか桜の開花宣言です。いつも入学式の頃に満開になっていたように記憶していますが、地球温暖化の影響でしょうか?年々開花の時期が早くなっているような気がしています。
 桜といえば誰もがいろいろなことを思い出されると思いますが、古来より日本人は花を愛で、楽しんできました。「色気」より「食い気」の私は飲むことも大好きで、家族や友人とお弁当を持参して楽しんでいます。10年ほど前に桜の木の下に寝転んで上を見上げたら青空に360度の満開の花で、あまりの美しさに放心状態になったことを思い出します。しかし皮肉なことに、最近は開花の時期に春の嵐や雨が重なり、せっかく開いた花があっという間に散ってしまうので、余計にいとおしく感じられるのかもしれませんね。花びらの薄さ、可愛い形や色、かすかな香りは癒しそのものです。時期をずらして後から八重桜が咲きますが、それも楽しみのひとつ。房状になった花びらは圧巻で、その花を集めて塩漬けにして保存しては料理に活用するのです。味付け、香り付け、色付けにと大活躍です。
 最近のニュースによるとコロナウイルスの感染拡大防止策として、東京の上野をはじめ桜の名所ではお花見ができなくなるそうです。仕方がないとはいえ、とても寂しい話です。今月はそんな日常を花の形をした器を集めて、器のお花見としゃれ込んでみました。何気なく開け閉めしている食器棚ですが、長年の間に少しずつ集まっています。花の形や色、柄などにこだわって探してみると案外色々あるものです。日本の食器は西洋のものとは違い、手に持って食べるということを前提に手取り感を大事に作られているので、小さくて可愛いものがたくさんあります。ちなみに小皿は3寸以下、もっと小さな豆皿は2寸以下のサイズで区別しています。また、四季の風情を器に表現するので形も面白いものが多いのです。例えば花型、動物型、葉型、折り紙型、幾何学模様の形などさまざまです。その中から小さな皿や猪口、小付け、珍味入れなどを9種類選び、色や形、高さ、風合いなど、隣の器とのバランスを考えながら並べてみました。バラバラに見える器も折敷やランチョンマットにおさめると洗練されて見えますね。ここまでくると料理は冷蔵庫にあるものを彩りよく盛り付けていくだけで、それらしくなるので不思議です。
 日本は四季がはっきりしていますから、その時期ならではの食材も取り入れるとより「ごちそう感」が増します。有田は自然がいっぱいで、庭のフキノトウ、ツクシやワラビなども食卓に上ります。出始めや旬の食材は季節のしるしとして、その時を逃さず上手に取り入れたいものです。特に春の味は苦みを大切にしたいですね。せっかくですからお気に入りのグラスを取り出し、冷えた日本酒を。花屋で見つけた桜の枝を飾れば、お酒も進むこと間違いなし!

小さな皿や猪口、小付け、珍味入れなどを9種類そろえてみました
メニュータラの芽の天ぷら、菜の花の辛し和え、ひじき炒め煮、ワラビの含め煮、ラディッシュの酢漬け、ワケギぐるぐる、かまぼこ、アサリのさっと煮、ツクシの素揚げ、日本酒
白磁菊型千代口 賞美堂本店(有田焼)
青白磁花方千代口 文三窯(伊万里焼)
桜花びら型小付け(桃) 瀬兵窯(伊万里焼)
花型小付け(黄) 草山窯(有田焼)
桔梗珍味 畑萬陶苑(伊万里焼)
白磁梅型豆皿 虎屋(東京)
桃釉花型豆皿 虎屋(東京)
桜型桜絵珍味 草山窯(有田焼)
二彩輪花豆皿 幸兵衛窯(美濃焼)
桜絵箸置き メーカー不明(京焼)
切溜(赤)蓋 コシノジュンコ(東京)
ガラス杯(1106-30z) 木村硝子(東京)
竹箸 山下工芸(別府市)