九州発!田中ゆかりのテーブル通信[39]12月:私のお正月はシンプルに

お屠蘇、紅白かまぼこ、数の子、松葉黒豆、ローストビーフ

 今年もあっという間に最後の月となりました。読者の皆様の一年はどの様な年だったでしょうか?私はありがたいことに、これといった病気やけがもなく、ただただ、慌ただしく毎日が過ぎていったという感じです。これからクリスマスや新年を迎える準備など楽しいはずなのに、コロナ感染者が再び増加傾向にあり、物価や電気料金などの上昇も気になるところで、何だか不安。年末はとにかく断捨離を強行し、せめてすっきりした気持ちで新年を迎えたいと思っています。

 昨年の「12月:一年の計は元旦にあり」にも書いた通り2年前からお正月は一人で過ごすことになり、お正月の過ごし方が変わってきました。忙しかった元旦から、一人だから自由にしていいのです。しかし、何もしないで過ごすのもどうしたものかと思いつつ今日にいたっております。

 ところで、また素晴らしい器を見つけてしまいました。それは「4月:春の恵みを食卓に」でお披露目した白磁太鼓型の盛皿の「兄弟」です。その盛皿は20年くらい前に大分の旅館のやきもの売店で見つけて購入したもので、これまで作り手がはっきりしていませんでした。でも、使う度に心の中で「もしかしたらだけど、もしかしたらだけど、波佐見焼じゃないの?」という印象を持っていました。

 ところが先日仕事で出かけたある商社様の商品置き場の棚に、何やら同じようなものを発見。「なぬ、なぬ?」とそのコーナーを改めて眺めてみたら、私が持っている大きな盛皿のほかに、白磁太鼓型の中サイズ盛皿と小サイズ盛皿が並んでいます。「やっぱり波佐見焼だったのね~」と窯元名もわかり、長年気になっていたことがすっきりしました。「兄弟」がいるのなら、やはり私の盛皿と20年ぶりに会わせてあげたいじゃないですか。「大、中、小とテーブルの真ん中に並べて、盛り取り料理を並べたら素敵よね」とか自分に都合の良い言い訳を考えて、仕事に来ているのに、また心の中で泣きながら買い物をしてしまったのです。断捨離とそろそろ終活をしなければと思っているはずなのに、また増やしてしまいました。我ながらもう病気としか思えません。

 というわけで、一人のお正月はこのようにしてみたいと思います。
 小さな盛皿には口取り(*)として、紅白かまぼこ、数の子、松葉黒豆などの祝い肴を。小ぶりでも高さがあるせいか、高貴な存在感があります。大きな盛皿には野菜とローストビーフを。写真ではわかりにくいのですが、こちらも高さが3.5センチほどあり、メインのお皿にぴったりです。これらをいただきながらお屠蘇(とそ)を味わいます。屠蘇器は雰囲気に合わせていくつか持っていますが、今回は白磁のシンプルな器に合わせ二口燗瓶(かんびん)にします。染付の伸びやかな線は笹の葉をイメージしたものでなんとなく緊張感が漂っており、新年にふさわしいかと。燗瓶とは、お酒を燗する(温める)ものです。昔から肥前地区では二口のものが作られており、中には底を無釉にすることで、直接火にかける「あぶり燗」ができるものも制作されていました。今は電子レンジのおかげでわずか数十秒で温かいお酒が楽しめますが、同時にお燗の風情もみられなくなりました。少し寂しいですね。シメは、カツオ菜をたっぷり入れたお雑煮がわが家流です。

 テーブルクロスは染付のブルーに合わせて、フランス製ダマスク織りを選んでみました。いつものテーブルやお部屋が明るくなります。

 先日、ある方から素敵なプレゼントをいただきました。箱を開けてみると、「なんて可愛いうさぎちゃん!」。さて、どこに飾ろうかな?来年はウサギのようにぴょんぴょん跳ねて元気よく、いくつになっても可愛らしくありたいものです。

干支うさぎ置物(畑萬陶苑)

 今年もご覧いただき誠にありがとうございました。皆様のご健康とお幸せをお祈り申し上げます。

 *口取り: 「口取り肴」の略。おせち料理や会席料理で最初に出す料理のこと

メニューお屠蘇、紅白かまぼこ、数の子、松葉黒豆、ローストビーフ
白磁太鼓型盛皿 大27.5センチ 光春窯(波佐見焼)
白磁太鼓型盛皿 中25センチ 光春窯(波佐見焼)-盛り付けには使用せず
白磁太鼓型盛皿 小18センチ 光春窯(波佐見焼)
ささ染付二口燗・盃 白山陶器(波佐見焼)
置物干支うさぎ置物 畑萬陶苑(伊万里焼)
テーブルクロスプロバンス ジャカールフランセ(フランス)