
日本政策投資銀行と日本経済研究所の編著による「『産業』としての工芸」(=写真)がこのほど、中央公論新社から発刊された。A5判、372ページ、2420円(税込)。
日本政策投資銀行は、「潜在力を活かした地域創生」を経営上の重点課題の一つとして特定しており、地方創生において活性化が不可欠な「工芸産業」については、2017年以降、日本経済研究所と連携して調査・研究を進めてきた。同著はその内容をまとめたもので、工芸産業について俯瞰し知見を得る上で欠かせない一冊といえる。
同著は6章で構成。第1章では、明治時代に美術や工業と関係しながら成立した「工芸」について、「美術としての工芸」と「産業としての工芸」に整理。第2章では明治時代から2000年までの工芸産業の歴史的展開を振り返り、第3~5章では2000年代以降の「工芸リバイバル」の動向を追う。工芸産業の構造的な問題に触れた上で、「リバイバル」の代表例を紹介するほか、工芸産業が取りうる有力なブランディング施策としての「工芸産地ツーリズム」や、工芸の海外展開について説明。また工芸産業の中で最も規模が大きい産業として、陶磁器産業の変遷もコラム形式で紹介しているほか、企業の事例として能作、中川政七商店、マルヒロ、百田陶園、菅原工芸硝子なども取り上げている。
第6章では、今後の工芸について国内外マーケットにおける見通しを示した上で、新しい工芸産業のあり方を考察。また、新たな展開を後押しするための政策的・金融的なサポートについて提言している。