
洋食器メーカー、ニッコー(白山市・三谷明子社長)の東京・富ケ谷の旗艦店・ショールーム「LOST AND FOUND」が2024年11月で、3周年を迎えた。これを記念して復刻アイテムを企画して発表し、同店と同社オンラインストアで販売している。
次の100年を見据える「LOST AND FOUND」
2021年11月に開店した「LOST AND FOUND」は、地下鉄千代田線代々木公園駅から渋谷方向に徒歩3分。カルチャー感の強いショップが多く集まり、国際的なエンターテインメント雑誌で「世界で最もクールな地域」としてランクイン、居住地としても人気の高いエリアだ。ほぼ井ノ頭通り沿いに位置し、建物1階がストア(25.64平方メートル)、地階にキッチン設備付きの法人向けショールーム(90.72平方メートル)、4階に事務所。陶磁器・ライフスタイルブランドの事業部はここにまとまる。
「LOST AND FOUND」は忘れ物保管場所という意味。①器に品質と品位を宿らせるために徹底した生産体制を確立する同社らしさを最大限に引き出したブランドに、②大切に作られたのに埋もれてしまっている物に再び光を当て、世の中に打ち出す、③旗艦店が発信拠点となり、多くの人が共感する新しいカルチャーを作る、という同社陶磁器事業の次の100年を見据えた一大プロジェクトだ。
ショップは長く愛用できる日用品を扱うジェネラルストアで、店内は2ゾーンで構成する。国内外の生活道具のセレクトショップ「Roundabout」や「OUTBOUND」のオーナーバイヤー・小林和人氏を商品セレクターに迎えた。リーデルのグラスや、イタリア老舗のカトラリー、天然素材を使ったハンドメイドによるドイツの老舗ブラシ、フィンランドのステンレス製調理器具など、世界中から厳選したテーブルウエア、バスグッズ、ガーデングッズと、幅広いラインアップ。また同店開店に合わせて「NIKKO FINE BONE CHINA」の中から、現代のライフスタイルに合わせて選び抜き再編集(=REMASTERED)した新コレクション「REMASTERED」を含む、約900点を手前ゾーンに展開する。
奥のゾーンとの境には印象的なアーチ型の通路。これは1963年に作られたという白山市の自社工場のれんが造りの窯をイメージしたもので、この先がニッコーショールーム兼ストア。若い世代に向けた19年発表の「Saredo」、21年のSDGsの観点から生まれた商品「Single use Planet」、コロナ禍に発案、23年マクアケで先行販売した舌のクリーナー「CERARI」といった近年発売品を含む約700点を集積する。地下1階のショールームは、イベントスペース、さらに撮影スペースとしての機能も備えるなど、「発信基地」としての役割も担う。

3周年企画として2デザイナーの食器を復刻
「LOST AND FOUND」が3周年を迎えたことを機に、ニッコーはこのほど、日本を代表するデザイナー・柳宗理氏(1915~2011)と陶芸家・曾田雄亮氏(1931~2015)によるシリーズの復刻して発表。また同店内では、「NIKKOの歩みとこれから」と題して同社の116年にわたるデザインと素材開発の歩みも紹介している。
柳氏の復刻品は、柳が海外輸出用として初めて食器に絵柄を付けたもので、1948年頃に作られていた「KIKYOシリーズ」を復刻したもの。10月のデザイナートトーキョーでは、松屋銀座で先行受注会を催した。32センチのだ円皿、17~23センチのプレート3種、2サイズのボウルの計6アイテムからなる。当時は松村硬質陶器が製作、硬質陶器製で銅板転写による下絵付けだったが、今回はボーンチャイナに転写シールでイングレーズ加工となっている。特にだ円皿は現存するものが1枚のみという貴重品で、再現には大きな苦労があった。このほか「柳宗理ボーンチャイナシリーズ」にも32センチのだ円皿、23センチと13センチのサラダボウルも追加した。
曾田氏の復刻品は、こちらも海外輸出用として1960~70年頃に日本硬質陶器(ニッコーの前身)で生まれ、2013年頃まで製造していた「オーバルホワイトシリーズ」。ポットやクリーマー、カップ&ソーサーなどコーヒー関連とボウル、プレート類11種をリサイズし、硬質陶器製からボーンチャイナ製で復活した。







(本稿は「陶業時報」2025年1月1日号に掲載した記事を再編集したものです)