「器」を軸とした複合ビル「TOIビル」を開業 カルチャージェネレーションジャパン

元問屋のビル外観。2階が「Onland Store」

 世界に誇れる日本文化の継承と創造を目指すプロデュース会社 Culture Generation Japan(堀田卓哉社長、以下CGJ) は、「クラフト&コミュニティ」をテーマとする複合施設「TOIビル(トイビル)」を昨年7月、東京・日本橋横山町に構えた。

事業概要/和食器のサブスクとクラフトツアー

 CGJは2011年に創業。東京都美術館や中小機構などの、地域資源を活用した新たなコラボレーション事業を手掛け、国内外の販路を開拓する。16年からジャパンブランドの共創プラットフォームを目指す現代の楽市・楽座「JAPAN BRAND FESTIVAL」を共同代表として設立。18年には次世代の学びの場「JAPAN BRAND PRODUCE SCHOOL」を開校した。

 19年、月額制の和食器を中心とするサブスクリプションサービス「CRAFTAL」を多治見・井澤コーポレーションとともに立ち上げ、翌年には家庭向けサービスも開始した。10産地以上の食器を取り扱い、借りた食器が気に入った際の販売もウェブ上で可能。また飲食店向けのサービスとして、これまで使ってきたもの、眠っているもの、チップしているものまでも対象として引き取りを行う。将来的には洗浄、リペアで再流通可能なもの、陶土としてリサイクルする事業にもつなげたい意向だ。現在利用飲食店は30店、コロナ禍にスタートした家庭向けも当初50世帯の申し込みから、約300世帯と順調に推移する。
 21年コンセプト「文化をめぐる、産地の旅」とする、国内ものづくり産地をめぐるクラフトツアープラットフォーム「Onland」(足を運ぶの意)の提供を始めた。産地の価値を可視化し、地方型コト消費のキーを、その地域が育んできた文化に触れる「本物の体験」とする。地域で活躍する人々、兵庫(トランクデザイン、シーラカンス食堂)、福井(TSUGI)、奈良(東風)、岐阜(井澤コーポレーション)、京都(showyou)らが企画・案内し、業界関連のツアーは有田、読谷村、島根(温泉津焼)、京都、岐阜、東京(江戸切子)、福井(漆器)など。

サブスクリプションサービス「Craftal」のサイト

「器」を軸とした複合施設TOIビル

 日本橋横山町は江戸時代から続く問屋街。これからのクラフトを変える新たな「問い」を立てることをコンセプトに元問屋であった5階建のビル一棟をリノベーションした。工芸の中から「器」を軸として各階を構成する。1階は、昼はパティスリー・カフェ、夕刻からはバルスタイルで営業。使用する食器類は「CRAFTAL」のもの、実際に器に触れながら食を楽しめる体験を提供する。2階は全国各地のクラフトとその地域の食を買える「Onland Store」で、クラフトツアーの実店舗。ローカルプロデューサーによってセレクトされた器やクラフト、その地域の食料品などを販売する。

 3階はサブスクで取り扱う全国各地の工芸品を展示するギャラリー。今後は陶芸体験教室などのワークショップも計画し、作品を作り、産地へ送り、焼き上がった作品を自ら取りに行く「産地→日本橋→産地」という循環型のツアーも企画していく。4階は同社CGJのオフィス、5階は昼は商談スペース、夜は「会員制スナック」として、ローカルプロデューサー、問屋街の人々や器好きが集まるイベントスペースとなっている。

Onlandの企画展

 2階ストアでは昨年9~11月の約2カ月間、「佐賀展」を企画。伊万里・有田の窯元の若手経営者及び後継者など13人で結成したチーム「NEXTRAD/ネクストラッド」の食器と、佐賀県産品を販売した。会期中には同チームのアドバイザー浜野貴晴氏(promoduction代表)がトークイベント「うつわ初心者でもわかる有田焼」を実施したほか、有田への旅もアピールした。10月21、22日にはものづくり産地が集うクラフト&ツーリズムマーケット「Onland Craft Market 2022」を東京駅日本橋口の広場で開催。京都陶磁器協同組合連合会やNEXTRAD、福島「器と食のマリアージュ」などが参加した。

 ストアでは井澤秀哉社長がローカルプロデューサーとして企画した「岐阜展」を1月20日まで開催中。「丼」をテーマにカク仲、美濃文山窯、ヤマ兵製陶所など全14の窯元商品のほか、松助窯からは一点もの抹茶碗が並び、美濃焼原点のうつわとして対比を見せる。2月5日からは「常滑展」を予定する。

 同ビルは「日本橋横山町・馬喰町エリア参画推進プログラム」に採択された第1弾のプロジェクト。堀田社長は、「コロナ禍でも生き残る飲食店は地元に愛されている店。週2回の来店客に素材や調理法を変え提供することは難しいが、食器を変え盛り付けで喜んでもらえることはある。器との新たな関わり方=問屋の新しいあり方、流通と売り方のアップデートなど、出口に向けた新たな可能性を探る拠点にしたい。器を軸にすることで、CRAFTAL と Onland の2柱の方向性もより鮮明になった」と話す。