九州発!田中ゆかりのテーブル通信[43]5月:不易流行

若菜ずし、絹さやとえのきの煮浸し、新ショウガの甘酢漬け

 あっという間にゴールデンウィークが終わりました。読者の皆様はどのように過ごされましたか?コロナの恐怖から少しずつ解放され、ゆっくりと日常が戻ってきている感がありますね。ゴールデンウィーク中は私の地元の佐賀県有田町でも隣町の長崎県波佐見町でも陶器市が開催されました。初日は大雨に見舞われましたが、期間中は沢山の人出で賑わっていました。

 私が初めて陶器市に行ったのは高校生?か大学生?のころだったでしょうか。友達と電車で有田に行き、一緒に歩いて回って品定めをする楽しさと、家に帰れば包みを開くときの嬉しさは、それ以来ずっとです。しかも大人になってからは、その延長で仕事をすることになり、この有田に住むことにもなってしまったのです。「地元住民の陶器市あるある」も経験しました。私の家から幹線道路に出る時は右折すると有田市街、左折すると波佐見町、でもどちらも渋滞で出られない。山を越えて回り道をしなければならないのです。スーパーやホームセンターに行きたいと思っても簡単にはたどり着きません。また、銀行の駐車場が半分になったり、思わぬ来客があったりして、休日なのに忙しい感じなのです。それでも今年は、リアルな陶器市が復活したことは私にとっても嬉しいことでした。

 そんな陶器市に通い続け、集まった器は膨大な量です。今日はその中から良いものは変わらずというアイテムを選んでみました。お料理は春の香りいっぱいの若菜寿司です。具はフキ、タケノコや生シイタケを酒、しょうゆ、みりん、砂糖などで煮含ませ、三つ葉は塩ゆでし、ざるにとって冷水をかけて冷まします。薄焼き卵はせん切りにして錦糸玉子に。すし飯がまだ温かいうちに具を混ぜ込み、錦糸卵をこんもりと盛ります。その周りに木の芽(山椒の若葉)をたっぷり散らします。何ともいえない良い香りのお寿司です。

 大人数の時は卵の黄色が映える染付の大皿を選びますが、食べるまで時間のある時は蓋があるお重なども利用します。写真のものは切溜(きりだめ)と呼ばれるもので、古くから生活の道具として、主に、料理の材料の入れや保存などに使われていたようです。箱の形をしていて重箱とはまた違った趣です。入れ子の三段で蓋もそれぞれにあり、とても重宝しています。

 取り皿は白磁の菊彫り銘々皿です。菊の花をかたどったお皿ですから本来は秋を知らせる器だったと思われますが、美しさと機能性を合わせ持っているため日常遣いになっていったのでしょう。直径14.5センチのちょうど手のひらに乗るサイズと薄さと軽さが絶妙です。高さが2.5センチあり、手に取りやすいように作られていると思われます。

 小鉢は絹さやとエノキの煮浸しです。空豆、エンドウなど豆類も旬を迎えますね。器はろくろの腕が冴える縁が薄造りの煎茶碗です。上品な黄釉、見込みにはガラスのような釉だまりが見えます。私の見立てで中付(小さな小鉢)にしました。

 新ショウガの甘酢漬けは別名ガリとも呼ばれ、お寿司屋さんでよく目にします。やわらかな辛みのみずみずしいショウガは初夏の季節だけ、ぜひ手作りしたいものです。新ショウガをできるだけ薄く切り、さっとゆでて冷めたらいったん絞り、昆布だし、酢、砂糖、塩に漬け込むだけです。薄いピンクはお料理の引き立て役ばかりでなく、お口や体をピリッとさせてくれます。器は手作りでたたらにした生地を糸などで四角に切り中央をくぼませたもので、染付の5つの花が何とも可愛らしい7センチ角の千代口です。しょうゆを入れたり珍味を盛ったりと、食卓のアクセントとして使っています。小物も重要ですね。

 明日(5月16日)の天気予報を見ていたら、晴れ。予想気温は31度ですって。次回の連載はバラ祭りの予定でしたが、すでに咲き始めております。沖縄はもう梅雨入りだそうです。季節がどんどん早送りになっている感じで、計画が狂っちゃいますね(涙)

 それでは皆様、そろそろ器も衣替えいたしましょう。

メニュー若菜ずし、絹さやとえのきの煮浸し、新ショウガの甘酢漬け
朱塗三段切溜 JUNKO KOSHINO(東京)
白磁菊彫り銘々皿 観山窯(有田焼)
黄釉煎茶碗 坂本達也(有田焼)
染付花絵角千代口 青窯(波佐見焼)
カトラリー利休箸