九州発!田中ゆかりのテーブル通信[40]1月:テーブルで初釜

お抹茶(天授・小山園 京都) お菓子(手作り最中・福砂屋 長崎)

 あけましておめでとうございます。

 新しい年を迎え、気持ちを新たにお過ごしのことと存じます。私は年末から体調を崩し、クリスマスもお正月もお布団の中でした。回復するのに時間がかかってしまい(歳ですかね~笑)、みなさんに後れを取った感じなので、早く取り戻さねばと焦っています。

 年末に茶道の先生宅にご挨拶に行くつもりでしたが、そういうわけで、年明けの10日にやっと伺うことができました。私は宗偏流に入門し32年と年月はベテランのようですが、始めた当初から仕事の都合でお茶会に参加する回数が少なく、さらにこの数年は母の介護やコロナの影響でお稽古を控えなければならずで、いつまで経っても新人のようです。ただ、今もこうしていられるのは、懐の深い先生のおかげであります。最近はリモート講習会もあり大変便利なのですが、やはり先生のそばで雑談しながらお人柄にも触れて学ぶことの楽しさやありがたさを、今になって感じるのです。実際、久しぶりに先生に点てていただいたお抹茶の美味しいこと。私自身もその翌日、自宅にて一人で「初釜」をしました。

 「初釜」とは新年最初のお茶会のことですが、お釜にくんだ水を火にかけ、お茶を点てるお湯を沸かします。新しい年を迎えて最初にお釜を火にかけるため、初釜といいます。仰々しく感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、今回の私の場合は鉄瓶で湯を沸かし、卓上で茶を点てるという、とてもシンプルなものです。

 茶碗や菓子器はどれにしましょうなど、あれこれ考えるのも楽しいですね。初釜ですから新年でおめでたい感じがする取り合わせにしたいと思います。私が選んだ茶碗は直径15.5センチ、高さ10センチもある大きな焼締めの碗です。抹茶碗かどうかもわかりませんが、昔、小石原焼の陶器市で見つけたもので、フランス人作家・リュック・フーシェさんの作品です。正面には掻き落としでしょうか、模様が見えますね。私は勝手に波の模様だと思っているので、名前を「大海」(たいかい)と名付けました。「大きな海」に入っているお茶を飲み干すわけですから、気分がいいですよね。

 菓子器は塗り物で、22,5センチの正角、黒地に緑の松が描かれています。これは、茶道の先輩からお祝いにいただいたもので、主菓子や干菓子など、どのようなお菓子も受けいれてくれます。写真の手前の懐紙はお菓子を載せるためのものです。お菓子は、カステラで有名な長崎、「福砂屋」の自分で作る最中です。皮には福砂屋の印、コウモリが刻印されています。コウモリは中国では吉祥模様といわれています。箱を開けると最中の皮とあんこが別々に入っていて、食べる直前にあんこを挟むので、皮は焼き立ての香ばしい香りとサクサクの歯ごたえ、あんこはしっとり、感動です。

 テーブルクロスはフランス製、ダマスク織りの中に所々にカットワークが施されて夢のような赤い色です。数年前にフランスに出かけた時にギャルリー・ラファイェットのリネン売り場で見つけたものです。たまたまセールの初日でお安くなっていました。その後日本でも輸入されたようですが、なかなかのお値段でした。今にしてみれば、「あの時もっとたくさん買えばよかった」と苦笑いしています。

 テーブルで初釜。やっと私にもお正月が来たようです。
 さあ、新しい年です。頑張ります!今年もよろしくお願いします。

メニューお抹茶(天授・小山園 京都)、お菓子(手作り最中・福砂屋 長崎)
焼締め掻き落とし大碗 リュック・フーシェ(小石原焼)
黒塗り松絵色漆正角菓子器(先輩にいただいたもの)
黄唐津五寸深皿 峰松義人(唐津焼)
白磁草林彫丸カップ 一真窯(波佐見焼)
テーブルクロスジャカール・フランセ(フランス)