九州発!田中ゆかりのテーブル通信[7]3月:おうちでお花見・凝って楽しい陶箱弁当

 日本人はお花見によって春の訪れを実感するそうですが、今年は暖冬で桜の開花予想も早くなる見通しだそうです。連日テレビなどでコロナウイルスの感染拡大に関して報道されており、その情報が大変気になるところですが、イベントの自粛や卒業式や入学式の出席者の縮小などがなされており、今年のお花見は見送る方も多いのではないでしょうか?そこで、今回はお家でお花見というテーマにしてみました。

「さまざまの こと思い出す さくらかな」

 松尾芭蕉の句です。この句を詠むだけで、本当に誰もが沢山のことを思い出し共感されることでしょう。古来より日本では桜を愛でてきました。桜の木に神様が降臨するとか、満開の桜に触れると健康になるとか、花見のみならず桜湯や桜ご飯、桜餅など、その美しさを存分に味わってきたのです。
 奈良時代は中国からの影響で梅が人気だったそうですが、平安時代には桜の花見が貴族の重要な行事に、江戸時代になると徳川家光が奈良から桜を移植させた上野が桜の名所となり、多くの人が花見をするようになりました。その桜の開花期間はたった一週間ほどで、散り際さえも美しいと日本人は感じるのです。もう今は見なくなりましたが、大学の合格電報の電文にも「サクラ サク」「サクラ チル」と表現されていましたね。

 さて、ご紹介するのは2種類の陶箱です。陶箱とは、蓋がついている箱型のものです。やきものの箱ですから身と蓋がきっちり合うように製作しなければなりません。とても贅沢な入れものだと思います。特別な日に家庭料理をこの箱に収めれば、家にいながら料亭気分が味わえます。庭を愛でながらお花見としましょう。

愛らしいまるまる弁当

染付の花濃み(だみ)の優しい雰囲気が好きです。花の絵も達者に描かれていますが、職人による呉須の絵の具を一心不乱に濃み筆で塗りつぶした筆あとが、おおらかな味わいとなって花を引き立たせています。相方は白磁を生かした丸紋です。ほのぼのとした雰囲気がいいですね。どちらも、まるまるした形と絵がとてもマッチして飽きの来ないデザインです。合わせる千代口は角型を。たたらを切り分けて作った感じが残る、遊び心漂う小物です。
お花見だと、お酒にも合うちょっとしゃれたメニューを考えますが、日常のお弁当でも入れ物が変わると味はまた格別になります。
テラスに面した窓際に座卓を持ち出し、自然に乾杯。座卓は時代物で漆や螺鈿(らでん)もボロボロになりかけていますが、簡単に持ち出せるサイズが大変気に入っており重宝しています。

メニュー手毬ずし、わかめと焼き筍、 レタスと人参と玉ねぎと大根のサラダ、小吸い物
染付まるまる弁当 花濃み・丸紋 しん窯(有田焼)
染付角千代口 青窯 (波佐見焼)
和風巾着 コボリ(栃木県)
小吸い物碗 (越前塗)
うすはりグラス 木村硝子(東京)
打ち出しコースター (約25年前にたち吉で購入。「瑞雲」の名あり)

お洒落な長角陶箱

 きれいな白磁の長角の蓋物です。蓋に赤い水引を花のように結んだ様を描いたものです。花の左右をよくよく見ると、わずか0.5ミリくらいの赤絵の線と線の間を赤濃みで塗りつぶし一本の水引になっています。可愛いと一言で表現できない緊張感が伝わるでしょうか。鍋島に有名な紐絵がありますが、そこまで仰々しくなくて、可愛らしくて凛としたおめでたい感じの絵柄を考えましたところ、それを見事に職人が表現してくれました。
 写真ではちらしずしを入れていますが、一人分のご飯とおかずが程よい感じで入ります。また、別の日には花見団子やお菓子を入れて、お抹茶とともに楽しんでいます。

メニュー蟹といくらのちらし寿司、紅白玉はんぺん、ミニがんも含め煮、ブロッコリー、苺、スイートスプリングス、お吸い物
祝結び赤紐長角蓋物 畑萬陶苑(伊万里焼)
冷酒グラス(木村硝子)
朱黒漆吸い物碗 喜八(京塗)
桜箸置き 松島(京焼)

 私のお花見、いかがでしたか?皆様もぜひ、器に凝ってお家でお花見をお楽しみください。