九州発!田中ゆかりのテーブル通信[4]12月:縁起担ぎ・幸せな新年を迎えるために

 今年も残すところあと、1カ月を切りました。毎日があっという間に過ぎていきます。振り返ると良かった方もそうでない方も、今月で何とか帳尻を合わせ、来年こそは良き年になりますようにと、誰もが願わずにはいられません。素晴らしい新年になりますように、また、新年の喜びを表現するために器の力を借りてお祝いしましょう。

厳かに祝う日本の伝統と器の模様

紅白なます、卵焼き、黒豆、田づくり

 お正月のお料理をおせちと言いますが、これは「御節句」を略したもので、本来は神様への供物であり、身内や友人と分け合うごちそうのことです。また、おせちは保存食でもあったため、重箱に詰めるのが普通でした。一の重は黒豆や数の子などの口取り、二の重は鯛や鰤などの焼き物、三の重は酢の物、与(四)の重にはゴボウや里芋などの煮物を奇数個詰めます。四は「死」に通じて縁起が悪いからとされています。おせちの材料は、鯛のめでたいや数の子の子孫繁栄などをはじめ、それぞれ意味や願いが込められています。

錦金彩絵と飾り皿ねずみ 岩尾磁器(有田焼)

 真塗の中央の華やかな三角のお皿には口取りを盛っています。実はこのお皿は飾り皿として製作されたものですが大変気に入っていまして、お正月やめでたい時の取皿として使用しています。よくよく見ると、分銅や巻物、宝珠などの宝物の絵と金彩で沢山のネズミが描かれています。来年は子年(ねずみどし)、そうです、私の干支なのです。屠蘇器(とそき)はサンゴや打ち出の小槌、丁子(ちょうじ)などの模様で埋め尽くされた宝尽くしの絵柄で、めでたさが倍増します。お正月にお屠蘇を飲めば「その年は病気にならない」という言い伝えがありますが、「屠蘇」の字には「死んだ者も生き返る」といった意味合いがあり、山椒、陳皮、桔梗、肉桂皮などの漢方薬が入っています。年少者から年長者へと飲んでいきます。おそろいの三段重には、一段目にするめと昆布と塩を盛り、二段目に干し柿、三段目にみかんを入れて、お屠蘇と共に進めます。松の内はこのセットを客間に飾っているのですが、お部屋の雰囲気が明るく華やかになり、なんとも晴れがましい気持ちになります。

錦宝尽くし屠蘇器、錦宝尽くし三段重、賞美堂本店(有田焼)
メニュー紅白なます、卵焼き、黒豆、田づくり
錦金彩絵と飾り皿ねずみ 岩尾磁器(有田焼)
ガラス冷酒杯 HOYAクリスタル
花丸紋重箱(金沢塗)
折敷(山田平安堂)
錦宝尽くし屠蘇器 賞美堂本店(有田焼)
錦宝尽くし三段重 賞美堂本店(有田焼)
朝鮮唐津筒型ミニ花入れ 納富悟(有田焼)
テーブルクロスダマスク織り ジョージ・ジェンセン(デンマーク)

カジュアルに楽しむ縁起物

上から右回りに:サラダ&キャビア、サーモンフレーク三つ葉、松前漬け、数の子粕漬、切り干し大根、中央:白菜昆布漬けゆず風味

 お友達と気軽なお正月のランチには可愛い縁起物の小皿を集めてお盆に載せれば、冷蔵庫に入っているものを盛り付けるだけで出来上がり。器のお喋りは楽しいものです。日本の器は自然界にある面白い形に意味や願いをこめて作られてきました。富士山は世界遺産にもなった日本一の山、初夢で一番縁起が良いとされています。松は常に緑色で神が宿る神聖な木であり、門松は年神様をお迎えする目印です。春は筍だったのに冬には根を張り大きく成長していく竹は繁栄を意味します。梅は中国では花の王様で、寒い冬に耐え一番に花を咲かせ良い香りを漂わせます。瓢箪(ひょうたん)は一本に沢山なるので繁栄の意味で千成瓢箪(せんなりびょうたん)と表現されます。中央には金箔を閉じ込めた片口の小付け、もともとは液体を移し替えるときの道具でしたが、形が面白いので器として作られるようになりました。
 日本は古くから自然崇拝と先祖への感謝、末永い繁栄への祈りと共にしきたりが生まれ、食事作法や器にも影響を与えてきたのです。日本人でよかった。

メニューサラダ&キャビア、サーモンフレーク三つ葉、松前漬け、数の子粕漬、切り干し大根、白菜昆布漬けゆず風味
essenceシリーズ(富士山、松、竹、梅、瓢箪)西海陶器(波佐見焼)
ガラス片口(不明)
折敷祖父江ジャパン(高岡塗)