「たのしうつくし古伊万里のかたち Ι」 戸栗美術館

「青磁染付樹鳥文葉形三足皿」 伊万里 江戸時代(17世紀後半) 戸栗美術館

 江戸時代、国の内外で人々を魅了した伊万里焼。そのさまざまな「かたち」に注目した「たのしうつくし古伊万里のかたち Ι」が、東京・渋谷の戸栗美術館で開催されている。2期に渡りその魅力に迫る同展の前期は、動物や植物、器物などから着想を得た「たのしいかたち」の作品を中心に、約100点が展示されている。
 江戸時代の有田では、さまざまな需要に応えて、多種多様な磁器が焼造されている。展示会場を見渡して、まず目に入るのは人間や動物をかたどった人形や置物の数々だ。独立ケースには、華やかな衣装に身を包んだ江戸中期の「婦人像」。後方のケースには、身の丈よりも大きな鯉に、目をむき口をへの字に結んで抱きつく人を模した「鯉人形」や、「ういろう」と書かれた大きな箱の上に、片肘をついて休憩する姿を写した「ういろう売り」など、思わず見とれるような作品がならぶ。さらにチョウや魚の形をした変形皿や、角樽や団扇、虫籠など本来磁器以外の素材で作られる日常の器物を題材にしたものなど、さまざまな形の古伊万里が次々に紹介され、その多様性に驚かされる。
 同展では最初のコーナーで、ろくろ成形をはじめろくろ型打ち成形、糸切り成形、型押し成形、板作り成形など、制作の基本的な技術を解説。作品を見ながら、多様な形がどんな技法で作られたかを考えるのも面白そうだ。「青磁染付樹鳥文葉形三足皿」は、ろくろで成形後手びねりで口縁に細工を加え葉の形を作っている。厚くかけられた青磁釉が艶やかで美しい。陶土に比べ形が作りにくいとされる磁土だが、その特性を乗り越えて、自由自在に形を生み出した当時の職人たちの技量の高さがしのばれる展覧会だ。前期は12月19日まで。「うつくしいかたち」に着目する後期が、1月7日~3月22日に開催される。