日本民藝館、「柳宗悦と古丹波」を開催

「自然釉壺」 鎌倉時代 日本民藝館蔵

 特別展「柳宗悦と古丹波」が、東京・駒場の日本民藝館で、11月24日まで開催されている。
 同館創設者の柳宗悦は、晩年丹波焼を「最も日本らしき品、渋さの極みを語る品、貧しさの富を示す品」と評している。日本六古窯の一つに数えられ、一部は茶陶としての名声を得ていたが、多くは日常の粗雑な器として顧みられない存在だった丹波焼。そんな丹波焼にかねてより心惹かれていた柳だったが、1938年に大阪の阪急百貨店で開催された「丹波古陶の名品会」(尚古堂主催)に出品された品々に改めて驚嘆したという。その後自然釉による灰被(はいかづき)に、人の作為の及ばない「他力美」を見出し、「品物に驚くべき美しさを与えている」と賞賛の言葉を残している。
 同館には民芸運動の初期から、灰被の品が蒐集された晩年まで、300点を超える丹波焼が所蔵されている。それには尚古堂の店主で、後に丹波古陶館初代館長となる中西幸一(1896~1969)と通(1932~2003)親子との交流が大きな役割を果たしていた。同展では同館が所蔵する丹波焼のコレクションから約100点に加え、今年開館50周年を迎えた丹波古陶館の優品約50点を併せて一堂に展観。自然釉をはじめ、赤土部や流釉、筒描、墨流、線彫、白掛など多様な技法の作品を網羅し、古丹波の優品をまとめて見る絶好の機会となっている。
 古丹波は開窯期の平安時代末期から江戸時代末期までに焼かれたものをいい、中世期までの「穴窯時代」と、近世期以降の「登窯時代」に大別される。同展の見どころの一つが、古い穴窯時代の優品がならぶコーナーだろう。紐作りで作られた形は口作りを含めて時代を追って端正になっていく。「自然釉壺」は、鎌倉時代の作。口の広がった素朴な壺に薪木の灰が厚く降りかかり「他力美」を見せる逸品だ。壺の真ん中が大きく広がった形は、これ1点だけだという。
 同展に関連して「丹波―いきる力が美をつくる」が、2020年5月2日~7月26日に、丹波篠山市の丹波古陶館で開催される。