幻の横浜焼・東京焼 茨城県陶芸美術館

 横浜・東京で作られ、世界を魅了した明治の輸出陶芸に焦点を当てる企画展「神業ニッポン 明治のやきもの 幻の横浜焼・東京焼」が、笠間市の茨城県陶芸美術館で、6月28日まで開催されている。
 江戸時代も末期の1859年、横浜港が開港し、欧米との本格的な貿易が始まった。日本からの輸出品として注目を集めたのが、日本の美術工芸品。中でも陶磁器は、多大な人気を集めていた。
 金彩や色絵技法を駆使した華やかな装飾。複雑で精緻を極めた陶彫などに飾られた作品は、当時欧米諸国で開催された万国博覧会でも高く評価され、花形の輸出品となった。多くの需要を満たすため、横浜や東京には日本各地から陶磁器業者が集まり、やがて一大窯業地を形成。技巧を凝らした輸出向けの陶磁器、いわゆる「横浜焼・東京焼」が生産された。陶磁器業者の数は、最盛期には500を超えたというが、その最盛期は20年足らずで終わりを告げた。輸出品という性格上、国内に留まった作品は少なく、現代では「幻の陶磁器」と呼ばれている。
 同展では国内随一のコレクターである田邊哲人氏により里帰りしたコレクションから、精選した作品を中心に約150件を一堂に紹介。宮川香山や井上良斎など、世界的にも評価の高い明治期の作家の作品をまとめて見ることができる。
 動植物が立体的に装飾された「高浮彫」の迫力ある造形や、現代では再現が難しいとされる精緻で多彩な絵付け、さらに日本的な絵付けの洋食器などの個性豊かな作品の数々を見ることができる。
 同館のホームページから、YouTubeで、担当学芸員による同展の見どころ紹介を、見ることができる。

茨城県陶芸美術館