鍋島焼の軌跡 戸栗美術館

「色絵亀甲椿文皿」鍋島 江戸時代(17世紀後半)戸栗美術館蔵

 1987年(昭和62年)に、全国でも珍しい陶磁器専門美術館として開館した戸栗美術館(東京・渋谷)が、今年開館35周年を迎える。以来創設者である戸栗亨氏が、収集した肥前磁器を中心とする数千点の所蔵品を、さまざまな視点から紹介する企画展を開催してきた。その丁寧な解説は、陶磁器を愛する人、業とする人々にとっても得るものが多い。

 そんな同館で、開館35周年記念特別展「鍋島焼―二百年の軌跡―」が7月18日まで開催されている。江戸時代の約200年間に及ぶ鍋島焼の歩みを、盛期を中心に、成形や装飾の技法、技術に注目して紹介する展覧会だ。佐賀藩が威信をかけて制作した鍋島焼約80点が公開されている。

 鍋島焼は17世紀中頃に誕生した。江戸時代に肥前国佐賀地方を治めた佐賀鍋島藩が、徳川将軍家への献上や、幕閣、公家、大名などへの贈答品として用いたやきものだ。厳しい管理体制の下、採算を度外視して特別にあつらえられ、日本磁器の最高峰とされている。最盛期は17世紀末から18世紀初頭頃。この時期の鍋島焼は、木盃形と呼ばれる高い高台が付く深い丸皿で、大きさも尺皿、七寸皿、五寸皿、小皿と決まっていた。色数は青、赤、黄、緑の最大4色。多くは植物文様で、人物や動物、風景などが描かれることはほとんどなかった。「色絵亀甲椿文皿」は、17世紀後半の前期鍋島と考えられる作品。緑色で塗る部分を赤色で輪郭を引くなど、前期の特徴が見られる一方、丁寧な裏文様や高い高台に巡らせた高台文様に、盛期への萌芽が認められる。

会期中に予定されている催し

  • 6月18日10時15分~ ラウンジトーク「鍋島焼入門」
  • 7月6日10時15分~ ラウンジトーク「鍋島焼―200年の軌跡―の見どころ」
    (いずれも約45分間、先着20人、参加費無料)