春爛漫。家の目の前に広がる山の景色も新芽が目立ち、もこもこっとしてきました。いつもならば行楽シーズンの到来でどこも賑わうはずで、私のいる有田でも今年は有田陶器市が開催されるということで楽しみにしていましたが、コロナ禍の第4波を考慮して中止が発表され、昨年と同じようにWebでの開催となりました。読者の皆さんも「今年は何を買おうかな」と思いを巡らせていることと思います。私もこの連載を始めてからは特に手持ちの器をじっくり見直すことになり、もうしまいきれないくらい持っているはずなのに、まだ足りないと感じるこの頃です。コワいです(笑)。
前回は豆皿や千代口(ちょこ*)、珍味と呼ばれる小さなサイズの花形の器を集めての楽しみ方をお話ししましたが、今回はそれとは対照的に、一人分を大きなお皿一枚に前菜からおかず、ご飯、サラダ、フルーツまで盛り付けてしまうという大胆な方法です。ここ数年はワンプレートが流行っていますが、ここでは大きなお皿が重要です。和食器の世界では大皿のサイズを8寸(24センチ)、9寸(27センチ)、1尺(30センチ)と表します。皆さんのお宅にある大皿や盛り皿は、鍋物の材料や盛り取り料理に使われることが多いと思いますが、それだけではもったいないので、ぜひお試しください。季節の食材を盛り付けた大皿はテーブルに出すと迫力があり、それを出されたお客様は思わず「わ~っ!」と声をあげるほど豪華なご馳走に感じます。また、もてなす側も片付ける時は大皿一枚を洗えば済みますから大変楽ちんで、ランチにおススメです。
写真の大皿は直径34センチで、全体にひだをつけ菊の花びらのように仕上げたものを菊割(きくわり)といいます。白磁ですから白菊といったところでしょうか。30年ほど前に購入したものですが、気品と優雅さを漂わせていながら食材や回りの食器とも調和し、飽きのこない器の定番です。その器をグーッと小さく碗型にした菊割丸千代口に、汁気のあるタケノコとワラビの含め煮を入れてみました。今、菊割のデザインが再ブレイク中で、さまざまなカラーや金彩・銀彩、マット釉やラスター釉、陶器や磁器などと、違った素材や風合いのものが多く作られていますので、皆さんのライフスタイルにあったものを探してみるのも楽しいと思います。
呉須と緑と金の線がモダンな雰囲気でありながら、生地のところどころに鉄粉が混じっていて味わいがある陶箱には前菜を。イカとタケノコの木の目和えです。蓋を開けた時に木の芽の香りがほのかにしてきます。
盛り付ける時は最初に、お庭で見つけたシダやふきの葉をあしらい、その上にたけのこご飯を物相型で固めたものを置いてから、バランスよく陶箱や千代口、おかずを盛り付けていきます。香の物はご飯のそばに、サラダやフルーツは外側に。
お吸い物は若竹汁、竹のお箸にワラビの箸置きを添えて、タケノコ三昧。簡単なお昼のおもてなしが大皿のおかげで大変身。あとは美女を待つばかりなり。
*千代口:猪口(ちょこ)と同じもの。佳字を選んだ表記。
メニュー | 鮭の塩焼き、サラダ、タケノコご飯、かまぼこ、卵焼き、たたきゴボウのおかかまぶし、長崎三菜漬け、イカとタケノコの木の目和え(陶箱)、タケノコとワラビの含め煮(千代口)、イチゴ、若竹汁 |
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器 | 白磁菊割盛り皿 賞美堂本店(有田焼) 白磁菊割丸千代口 賞美堂本店(有田焼) 三色筋角陶箱 伊万里陶苑(伊万里焼) 千段汁椀(越前塗) ワラビ箸置き 不明 竹箸 山下工芸(大分) |