九州発!田中ゆかりのテーブル通信[60]10月:新潟の旅

佐賀嬉野特上煎茶・笹だんご

 やっと秋らしくなりました。行楽の季節の到来です。楽しい計画を立てておられる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 私は幸運にも今月上旬に初めて新潟を訪れる機会に恵まれました。尋ねてみると海や山の幸と広大な平野があり大変豊かなところという印象を受けました。まず佐渡へ渡って金山を巡り、広いのどかな田園風景を目にしたときは、島にいるということを忘れるくらいでした。その翌日、新潟港に戻り現地の方々と夕食を共にしていたとき、北朝鮮からの船「万景峰号」の寄港について触れると、現地の方とこんな会話がありました。

現地の方 「佐渡はどうでしたか?」
私 「とてものどかで、感動しました」
現地の方 「(不思議そうな顔で)寂しいところとは思いませんでしたか?あそこは昔から拉致が多く行われたたところなのですよ」

これを聞いて私はとても驚きました。さらに、

私 「そういえば、拉致被害者の横田めぐみさんが10月5日で60歳になられたというニュースを見ました」
別の現地の方 「横田めぐみさんのお父さんは私の大先輩です」

この話にもまた驚き、拉致問題を非常に身近に感じていました。

 今回の旅の目的は、燕三条で10月3~6日に行われた「工場の祭典」を視察することでした。この地域には金属加工を中心にモノづくりを行う多種多様な工場がたくさんあり、この祭典には108社の工場や企業が参加し、普段一般公開されていない多くの工場を一斉開放し、訪れた方が見学や体験をすることができるオープンファクトリーイベントが開催されました。

 私も仕事柄、ナイフやフォーク、スプーン、お鍋、フライパンなどの調理器具の製造工程を座学で学んでいましたが、実際に製造現場を見ることは初めてでしたのでとても勉強になりました。東京オリンピックの選手たちが使ったカトラリーの製作所を訪ねたり、一枚の銅板を金づちでたたいてポットや花入れを成形する様子を見学したりする中で、鍛冶仕事は男性の仕事だと思っていたら工場内には多くの女性が働いていたり、汚れる仕事だと思っていたら工場内がとてもきれいだったりと、とにかく驚きの連続でした。

 旅の記念にと思い、「よく切れる爪切り」を購入しました。刃研ぎやバネ交換などのメンテナンスも可能ということです。末永く使っていこうと思います。旅といえばお土産がつきものですが、どこにいっても笹だんごを目にします。さすがコメどころ、賞味期限が短いのが気になりますが、食べてみたくなり求めました。粒あんとこしあんがありました。

 写真は、いつもより上等の煎茶を入れ、きれいな緑が映える白磁輪花の小湯飲みを選びました。波佐見の伝統工芸士、故・中村平三さんの作品です。同じく白磁の横手の急須はお気に入り。小さな口から美味しい茶液があふれます。これは知人にいただいたもの。菓子皿は笹だんごが引き立つように橘の形の杉板を合わせて。何ともいえない美しい形のミニ花入れは淡いグレイの色。テーブルにぴったりのサイズです。庭先に咲いているアメジストセイジを一枝飾ります。テーブルクロスは地味ながらカットワークとダマスク織りの手の込んだもので秋になると使いたくなる逸品です。

純米緑川

 こちらの写真は、新潟の方から頂戴したお酒で「純米・緑川」です。深い味わいに絡む上品な香りを楽しんでくださいとあります。冷やしていただくことにしました。ガラス瓶に移して二種類の杯を用意しました。唐津焼の筒型焼き締めと窯変ぐい吞みを墨黒はつり盆にのせて。淡麗でするすると飲みやすいです。

 おっと!窯変ぐい吞みがお酒の輝きで金色に変わってきました。酔い心地も最高潮です。飲みすぎないよう、やわらぎ水も準備しましょうね~。帰り着いてからも十分楽しい新潟の旅でした。では、ごきげんよう。

メニュー写真1枚目:佐賀嬉野特上煎茶、笹だんご
写真2枚目:純米緑川
白磁横手急須 メーカー不詳(知人にいただいたもの)
白磁輪花小湯呑 中村平三(波佐見焼)
橘型杉板 たち吉(京都)
ガラスカラフェ メーカー不詳(旅先で購入したもの)
筒型焼き締め杯 中里大亀(唐津焼)
窯変ぐい吞み 府川泉(唐津焼)
アメジストセイジ
ミニ花瓶グレイ 阿部薫太郎(西海陶器)
盆とクロス墨黒はつり盆 大蔵達雄(静岡)
ボスポアーレ ジャカールフランセ(フランス)
旅の記念爪きり 諏訪田製作所(新潟県三条市)