九州発!田中ゆかりのテーブル通信[57]7月:旅の思い出・やちむん

クリームみつ豆、冷茶

 最近は各地で大雨の被害が伝えられ、土砂災害、土地の浸水などが気になる毎日です。読者の皆様は梅雨の時期をどのようにお過ごしでしょうか?「器の衣替え」はもう、済まされましたか?

 先月末ごろ、私は夫の仕事の関係で沖縄に行く幸運に恵まれました。残念ながら梅雨末期に当たり、現地の空港到着時から雨。素敵なホテルに到着したものの、目の前に広がる海はどよ~んとしていました。今回の旅の自由時間は一日くらいしかなかったのですが、私には行きたいところがありました。

 5年ほど前に訪れた読谷村のやちむんの里。その道中にいただいた昼食が今も忘れられません。ソーキ定食というもので、ご飯やソバ、揚げ豆腐や野菜、骨付き豚肉の煮しめなどが「やちむん」の器にたっぷりと盛られており、素朴でぽってりと厚みのある陶器の手触りに、沖縄の自然や人が持つおおらかさを感じ、感激したのを覚えています。今回の旅の前から「もう一度、あのお店でソーキ定食を食べてみたい」という思いがこみ上げていました。それともう一つ、5年前は併設の売店で旅の記念にと思い、大ぶりの茶碗を買いました。少し歪んでいたのですがそこが愛嬌で、こげ茶色に白っぽい化粧土のようなもので大胆な唐草が描かれていました。それに枝豆など入れて楽しんでいたのですが、粗相をして割ってしまったのです。「もう一度あの茶碗を手に入れたい」と考えていたのですが、ソーキ定食のお店の名前も茶碗の作者もうろ覚えで、カンだけが頼りでした。

 1日しかない自由時間に、夫は「海に行ってシュノーケリングをして、ステーキを食べよう」と言っていました。一方で私は「名前もわからないお店で沖縄料理を食べ、やちむんの里に行って器の品定めをしたい」という考え。いつもこんな風でかみ合わないのです。だけどけんかしている場合ではありませんでした。何とかしなければと。

 午前中はお弁当を持って本部町の「ゴリラチョップ」という白砂の綺麗なビーチのサンゴ礁スポットでシュノーケリングをしました。この時間は雨がやんでいたのでラッキーでした。テーブルサンゴの間を綺麗な色とりどりの魚が泳ぐ様はまさにパラダイス。お化粧がはがれたり髪の毛がばさばさになるのはあまり好まなかったのですが、これも夫を黙らせ午後はやちむんの里に行くためです。頑張りました。いったんホテルに戻り、シャワーを浴びてから目的地へ向かいます。ランチのお店は調べていたら閉店していました。あ~残念。

 午後になると土砂降りになってしまい、そんな中で読谷村のやちむんの里についたのは夕方でした。19の工房やギャラリーセレクトショップなどがあり、4つの登り窯があるそうです。あまり時間がなく、網羅することはできませんでしたが、読谷山焼の「北窯共同売店」というところで花瓶と大ぶりの碗を2個購入しました。以前愛用していたものと同じものは見つかりませんでしたが、その作者の名前を知ることができました。翌日空港へ向かう直前に、ホテルのギャラリーでこげ茶色の小ぶり碗を見つけ、旅の記念にと求めました。

 というわけで、今月は「旅の思い出・やちむん」です。毎日蒸し暑い日が続きますので、クリームみつ豆を入れてみました。この碗は夫が選んだもので直径14.3センチ、高さ6センチの大ぶりで、小丼といった雰囲気です。朱塗りのスプーンを添えて。スプーンレストにしているのはビーチで見つけたサンゴです。海に行くたびに形の良いサンゴを見つけては、夏の箸置きなどにしています。

 花入れは直径5センチ高さ13.5センチ、黒釉、鶴首の姿が美しいもので、食卓用に。庭のハーブの植木鉢にイタリアンパセリの花が咲いていましたので、華やかなみつ豆の色の引き立て役に一枝入れてみました。

 あとはガラス器に冷茶を添えて爽やかに。

 少しは涼しくなったかしら。梅雨明けが待ち遠しいですね。

メニュークリームみつ豆、冷茶
4寸 マカイ 北窯・松田共司(読谷山焼)
4.5寸 マカイ 北窯・松田共司(読谷山焼)
3.5寸 マカイ 山田真萬(読谷山焼)
手ふきガラス(不詳)
カトラリー朱塗りスプーン(秋田・川連塗)
イタリアンパセリの花
黒釉花瓶 北窯・松田共司(読谷山焼)