九州発!田中ゆかりのテーブル通信[52]2月:雛の季節

特上煎茶、和三盆、金平糖、白酒

 2月上旬は大雪の心配をしていたかと思えば、13日からは全国的に4月並みの陽気となり、ぼんやりしているうちに私の自宅の庭の梅があっという間に満開となりました。それに合わせたかのように全国各地ではお雛(ひな)様めぐりが始まっています。地元でも「佐賀城下ひな祭り」や「有田雛のやきものまつり」が開催され、多くの人が鑑賞に訪れ賑わっています。ちょっと足を延ばせば福岡県柳川市の「ひな祭り・さげもんめぐり」も有名です。「さげもん」とは江戸末期より女の子が生まれると初節句のお祝いとして、お雛様の代わりに古着の端切れで小物を作って飾りつけたのが始まりだとされています。竹の輪にさげられたのは、鶴・亀・海老をはじめとした縁起の良いもので、全部で51個。人生50年といわれていた時代に1年でも長生きしてほしいという親の願いが込められています。数年前にその祭りを見に訪れたときは、種類の多さと精巧な作り、その美しさにとても感動しました。いつの時代にも可愛いお雛様の姿を見るのは心が安らぎますね。

自宅の庭の梅はすでに満開に

 私が子どもの頃は、従妹から譲り受けたお雛様が家にありましたが、それを飾り付けたことはあまり覚えていなく、しまうときに遊び半分で壊してしまった苦い記憶だけが残っています。あのお雛様はどこに行ったのかな?母が捨ててしまったのでしょうか?大人になってからは、可愛い小さなお雛様を見つけては集めて飾り、一人で楽しんでおります。お雛様は一年に一度飾りますが、押し入れなどにしまい込んだままだと縁起が良くない、と聞いたことがあります。ご自宅にある方はぜひ飾って楽しんでくださいね。

 今月は春の始まりの喜びとお雛様の思い出をともに楽しむお茶の時間です。可愛い小急須は、径が7センチ高さ9センチの有田焼、深川製磁・百年庵のもの。まず形が面白いのです。この形はおそらく茶道具の一つである鉄の茶釜をかたどったものでしょう。デザイナーの遊び心がしのばれます。蓋には春のモチーフである流水に桜、胴には染錦金彩で「貝合わせ」の絵が描かれています。「貝合わせ」は雛祭りの遊びなので、この季節にぴったりのモチーフ。二枚貝には夫婦和合の意味もあります。また、逆さにした貝を窓絵に見立て、雲を抱いた富士山も描かれています。これは富士山好きな私にとってお気に入りポイントです。底の部分は茶釜を思わせる鉄さび色で締められています。この急須に上等の茶葉を入れ、美味しい緑色の煎茶を抽出します。

 合わせるお小煎茶碗は京焼、これまた「ミニサイズ」で径が6センチ高さ4センチ、薄くて軽くて茶碗の縁が優しくカーブしているので、唇にピタッと吸い付くようです。染付で描かれている鹿は、聖獣・神の使いで、長寿のシンボルとされています。銀のコースターと合わせると、小煎茶碗の茶の緑が映え、清々しい気持ちに。

 お菓子は雛あられや金平糖や和三盆、小さくてかわいいお菓子はひし形の豆皿にのせて。白酒もほんの少しアンティークのリキュールグラスに添えました。それぞれの小さな器たちを緋毛氈(ひもうせん)のような朱色の足付き丸盆に集めれば「自分で自分をおもてなしセット」の出来上がり。実はこのお盆、骨董店で購入したときは真っ黒の真塗(しんぬり)に金の蝶の蒔絵が施されたクラシックな感じでした。ところどころ塗りが剥がれてきたので、思い切って塗り直しをお願いしました。表を朱色で裏を黒に2色に塗分けてもらったところ、とってもモダンな新品のようなお盆に変身してくれました。

 いつものテーブルに、これは桃の花でしょうか?帯のような和柄のランナーをあしらってみるとお部屋の雰囲気も変わります。花入れは口径2センチ高さ8センチの焼き締めミニ花入れです。旅先で記念に買い求めた岡山の備前焼に菜の花のつぼみを生けてみました。このしぶ~いこげ茶の色や質感が、花や葉、ランナーを引き立ててくれています。何気ないお茶の時間を素敵な器や道具が助けてくれました。

 毎日忙しく暮らしているみなさんも、「自分で自分をおもてなし」してみてください。癒しのひと時をお茶の時間から始めてみてはいかがでしょう。

 各地ではすでに春一番が吹いて、いよいよ春が近づいてきましたね。

メニュー特上煎茶、和三盆、金平糖、白酒
染錦金彩貝合わせ絵茶釜型小急須 深川製磁(有田焼)
染付鹿絵小煎茶碗 東哉(京焼・清水焼)
コースター たち吉(京都)
黄釉菱形豆皿 畑萬陶苑(伊万里焼)
リキュールグラス アンティーク(イギリス)
丸盆(骨董品を塗り直したもの)
菜の花
焼き締めミニ花入れ 不詳(備前焼)
ランナー金襴花ランナー ブルーミング中西(東京)