伝統工芸と先端技術の融合 吉本英樹展

金沢箔の箔一との共同研究の成果として7作品を展示(写真・板東成留)

 現代アーティスト吉本英樹氏による金沢箔と光の作品展「DAWN」が8月3~7日、東京・渋谷で開催された。同展は、ロンドンと東京を拠点とするデザインエンジニアリングスタジオ「Tangent」の創業者である同氏が個人名義で催す初の個展。氏は東京大学先端科学技術研究センター(以下、先端研)特任准教授を務めており、先端研と石川県の連携協定に基づいた、金沢箔の箔一との共同研究の成果として、7作品を披露した。

 国内に数台しかないピコ秒レーザー加工機を用い、金沢箔に直径0.1ミリという穴を無数に開け、光を透過させた、これまでにない金沢箔のパフォーマンスを引き出した作品。DAWN=夜明けには、伝統工芸に新たな1ページを刻みたいという思いと、金箔とプラチナ箔、各々の透過性を生かした宇宙的な光の情景が表現されている。Tangentと箔一とは昨年、高野山の宿坊「恵光院」内の特別室の壁面アート作品「月輪(がちりん)」制作でコラボレーションを行っている。

 吉本氏は東京大学で航空宇宙工学を学び、英国でデザイン工学を修めた。2015年にスタジオを設立、エルメスなど世界的なラグジュアリーブランドにデザインやコンセプトを提供する。20年先端研の特任准教授に着任、資生堂など10社と先端アートデザイン講座を共同設立。さらに近年は日本の伝統工芸に新しい発見をもたらすことを目指したプロジェクト「Craft × Tech」を立ち上げた。第1回となる今年は津軽塗、川連漆器、南部鉄器、会津本郷焼など東北6県6産地と、世界的6クリエーターによるコラボレーション作品に臨んでおり、吉本氏自身も会津本郷焼とタッグを組む。

 「DAWN」での内覧会で同氏は「日本の職人による工芸を、アート作品として発表することで、世に知ってもらい新しいビジネスにも貢献していきたい」と語った。

金沢箔を用いた作品と吉本英樹氏