かくも多様な酒のうつわ 愛知県陶磁美術館

平戸焼「染付瓢箪に鼠酒注」明治時代(19世紀後半)個人蔵

 瀬戸市の愛知県陶磁美術館で7月3日まで、企画展「酒のうつわ―その美、こだわり…」が開かれている。古来祭祀(さいし)で重用され、近世では庶民層に浸透して絆を深め、宴席を盛り上げ楽しまれるようになった酒。やがて、やきものの焼成がはじまると、酒を容れる多種多様な器が生み出されて行った。

 同展では、名古屋の茶人・木村定三をはじめ、豊橋出身の企業人・司忠、陶芸作家・辻清明ら各氏のコレクション他、多館所蔵の計220点を展示。「酒器とはかくも多様であり、手に取って使ってみたいと思えるよう設え風の展示も織り交ぜた。酒のうつわには日本人の豊かな感性が生み出した面白き『うつわ使い』の世界を見ることができる」と大槻倫子学芸員。鑑賞を勧める一つが、不老長生の吉祥ヒョウタンをかたどった器の上に子孫繁栄のネズミを配した「染付瓢箪に鼠酒注」。良質の白い磁土で繊細な細工物を得意とした平戸焼陶磁器である。

 コロナ禍で酒席が縮小ムードにある昨今、「先人たちが楽しんだアイデアあふれる酒器を通じて、人生を楽しむヒントを見つけていただければ」と話している。

愛知県陶磁美術館