九州発!田中ゆかりのテーブル通信[45]7月:涼を求めて

冷やしそうめん、薬味3種(青じそ・ミョウガ・ショウガ)、昆布カツオだし

 今年も長い梅雨となりました。大雨と蒸し暑い日が続く中、各地で大きな災害が発生し、テレビのニュース映像を見るたびに心が痛みます。

 九州福岡県東峰村は小石原焼の産地です。6年前(2017年)に九州北部豪雨で被災した後、新たに家や工房、窯を構え、再興を目指していたところでした。しかし、再び今回の豪雨で大木がなぎ倒され、複数の建物が倒壊して村にはたくさんの土砂や大きな石が流れ込んでしまいました。猛威を振るう自然災害。雨があがった今は、連日30度越えの暑さの中で泥のかき出し作業が行われています。「それでも前を向いていきます」と現地の女性がインタビューに答えておられました。全国の被災された方々には、心より見舞い申し上げます。

 さて、今回は昼食の話です。そば・うどん・冷や麦・そうめん・パスタ・中華麺など昼食は麺類という方も多いと思われますが、この毎日の暑さには冷た~いそうめんが一番ではないでしょうか?地元の佐賀は神崎そうめん、隣の長崎は島原そうめんが有名です。そうめんには機械で伸ばしたものと、手で伸ばしたものがあり、手延べは植物油を加えてよりをかけながら伸ばすので腰が強く風味が良いそうで、特に「ひねもの」(2年以上たったもの)は味が良くなるといわれており、湿気のないところに保存してカビに注意する必要がありますが、とても珍重されています。

 美味しくいただくためにはゆで方が重要です。5リットルくらいのたっぷりの湯を沸かし、そうめんをさらさらと鍋に入れ、すぐに箸でかき回します。しばらくするとそうめんが浮き上がってきます。吹きこぼれる直前にカップ1杯の水を差し、再び煮立ったら火を止めザルにとり、冷水につけ箸でかき回しながら水を取り替えます。そうめんが冷えたら冷水にさらして、よく揉みます。まるで洗濯をするような要領で、両手で充分揉みます。ぬめりが取れ、麺がややしまったような感じになるまで続けるのです。「そんなに~!?」と思う方もおられるかもしれませんが、以前よく通っていた友人のうどん屋さんで、ある日冷やしぶっかけうどんを注文し何気に厨房をのぞき込むと、何やら冷水の中で洗濯をしています。「めっちゃ揉んでる~!」とびっくりしたのでした。揉み方は大胆でよいようです。あとは冷たくした麵を深めの鉢に入れて冷水と氷を載せ、つけ汁と薬味を準備して。

 鉢はその時の気分でガラスや磁器、陶器など、白い麵が引き立つ色を選びます。今回は、カジュアルでナチュラルな雰囲気の直径22センチ、深さ9センチの普段はサラダボウルとして使っているものです。縁の素朴な素焼きと、内側のブルーの釉薬の優しい涼やかな色が、そうめんを盛り付けてみると、よく合います。氷はケチらずたっぷりと、庭のもみじを一枝飾りに。

 薬味はお好みで色々にと思いますが、私は夏ならではの定番、夏野菜の青じそせん切り、みょうがの半月薄切り、おろししょうがを添えます。市販のチューブタイプも便利ですが、やはり本物は味が一味も二味も違うように思います。骨董屋で見つけた青磁の瓢箪型の「手塩皿」にバランスよく盛り合わせて。「手塩皿」とは、小皿より小さい二寸くらいのもの。手に取ってみると小さくて可愛いサイズで、江戸時代には膳にそえる塩入れとしてさまざまな形や色のものが作られました。コレクターもいらっしゃるくらいです。今でも食卓のアクセントとして遊び心を楽しむにはもってこいです。

 そうめんのつゆは昆布やカツオで採っただしが一般的ですが、我が家では夫のリクエストで、煮干しやシイタケだし、海老の煮汁もだしとして利用します。それぞれ好みのだしで食べて、最後のしめは「すり胡麻を入れて食べる」です。味変で楽しいですよ。そのため夫の分はつゆが入った蕎麦猪口が3個並び、昆布カツオ&海老&胡麻の競演となります(あ~めんどくさ~)。もちろん私は笑顔で対応しております。オホホッ。最近は美味しい麺つゆも販売されていますからありがたいですね。清潔感あふれる真っ白の磁器の蕎麦猪口はダイヤ型の彫りで、個人的にはどことなく長崎の教会のステンドガラスを思い起こさせてくれます。不思議と和食でも、洋食でもすんなりと溶け込んでくれます。

 ここまで読んでくださった方は、次のお昼は「冷やしそうめんで決まり!」ですよね。熱中症対策にもお勧めです。これで暑さに負けず、お元気でお過ごしください。

メニュー冷やしそうめん、薬味3種(青じそ・ミョウガ・ショウガ)、昆布カツオだし
テラコッタブルー ボウルL 利左エ門窯(波佐見焼)
白磁ダイヤ彫蕎麦猪口 辻与製陶所(肥前吉田焼)
青磁瓢型手塩皿 時代物
ガラス片口注器 不詳
ランチョンマットアーバンネイチャーカルチャー(オランダ)