九州発!田中ゆかりのテーブル通信[42]4月:タケノコ三昧

焼きタケノコバターしょうゆ味、トマトとパプリカのピクルス、タケノコとフキと天ぷらの田舎煮、たけのこご飯、昆布の佃煮、デコポンゼリー

 今年の桜の便りは東京からでした。待ちに待ったお花見も解禁ということで、各地ではごちそう持参で楽しまれた方も多かったようです。あいにく私はタイミングが悪くチャンスを逃してしまい、すっかり葉桜になってからのお花見弁当となりました。それでも風に吹かれ太陽の下でひと時を過ごせることは、コロナの恐怖から解放され、とてもいい気分です。

 また、春本番になり新しい季節になったことを実感します。先日もスーパーに買い物に行き、掘りたてタケノコを見つけました。小さい割になかなかのお値段だったので、買うか買うまいかと迷いに迷い、タケノコをつかんだり離したりして、結局買わずに帰ったのでした。しかし、その2日後にお隣さんからゆでたてのタケノコを頂戴し、念願の初物を食することとなり、うれしくてタケノコ三昧のメニューになりました。

 写真手前から、まず穂先を縦割りにして繊維の歯ごたえを楽しみます。油で焼いて焦げ目をつけたらしょうゆとみりんとバターで味付けをします。甘辛い味と香ばしい香りが食欲をそそります。目にも鮮やかな赤いプチトマトはピクルスにしたもので、バターまみれのお口をさっぱりと整えてくれます。

 次は穂先の下の部分を薄目に切り、フキと天ぷら(魚のすり身を平たく成形し油で揚げたさつま揚げのようなもの)と一緒に柔らかく煮しめたものです。春の食材としては最強のコンビですね。フキは下ゆでしてから筋を取るのが面倒くさいけど、あの独特の味と香りを楽しむためには必要な作業であり、左手のリハビリをしている私にはありがたいお仕事です。茶色の料理が続きますので、庭のツワブキの葉を利用して盛り付けることにしました。その横にはパプリカのピクルス、色の取り合わせも考えます。

 真打ちはご飯、いちょう切りにしたタケノコとうすあげを一緒に炊きこんだもの。味付けは控えめに塩とお酒、薄口しょうゆを少々、隣には昆布の佃煮を添えました。今の私はおにぎりを握ることができないのですが、ありがたいことにちょうど良いサイズの型がありまして、その中に適量のご飯を入れて蓋をしてぎゅっと抑えると立派な三角になってくれるのです。助かる~。

 さあ、これらをどんな器に盛りましょう。取り出したのは青白磁の大きなまな板皿です。縦18センチ、横63センチもある、まな板よりもうんと大きい皿です。波佐見焼伝統工芸士、福重久弥さんの手作りの作品です。一般的にまな板皿は業務用では刺身の盛り合わせや生き造りなどに使われることが多いのですが、家庭ではあまり見かけない大きさですね。しかし、改めて手に取ると迫力があり食卓が何より華やかになります。おもてなしにはもってこいです。生地をたたらにして両端をピンと持ち上げたような少し緊張感のある形、少しずつ薄くなっていく生地に削りを入れて、そこに釉がたまり穏やかな水面のような模様が浮き上がり、なんとも春の日の集いにふさわしく思えたのでした。

 箸置きはわらび、唐津焼の窯元さんにお邪魔して私がお遊びで作陶したものです。小さいワラビは箸置き、長いのはレストのつもりです。間違っても注文しないでくださいね。2度と作れませんから。

 デザートはデコポンの果汁を絞りゼリーにしたもので、器はルネ・ラリックのトウキョウというシリーズのとても美しいリキュールグラスです。イギリスのアンティーク、デミタススプーンを合わせて。ガラスを加えると食卓が軽やかになりますね。

 季節の移ろいを風景や食材や器と共に五感を使って味わい楽しむことができる日本って、やっぱり素晴らしいですね。もうすぐゴールデンウィーク、ぜひ各地の陶器祭りにお出掛けください。読者の皆様に素敵な器が見つかりますようにと念じております。

メニュー焼きタケノコバターしょうゆ味、トマトとパプリカのピクルス、タケノコとフキと天ぷらの田舎煮、たけのこご飯、昆布の佃煮、デコポンゼリー
青白磁彫大長皿 福重久弥(波佐見)
わらび箸置き・レスト 自作(唐津)
リキュールグラス ルネ・ラリック(フランス)
カトラリーデミタススプーン アンティーク(イギリス)
竹箸 山下工芸(大分県)
サボテン科リプサリス(最近凝っている多肉植物)