九州発!田中ゆかりのテーブル通信[36]9月:夏の名残を楽しんで

スパゲティー大葉のジェノベーゼ、かぼちゃのスープ、クリーンサラダ

 猛暑の夏を何とかやり過ごしながら9月に入りました。早速で恐縮ですが悲しいお知らせです。先月号で紹介させていただいたメダカのうち数匹と、数年前にホームセンターにて300円で購入した豆のように小さい金魚の金ちゃん、ただの金魚と思っていたら大きく成長し、なんとオランダシシガシラになっていました。しかし、この異常な暑さで残念ながらお亡くなりになりました。

 今度は台風11号騒動です。
 大雨になれば避難勧告が出て、その度に雨戸を閉め、パソコンと貴重品を持って食料を買い込み実家へ。もう、本当に次から次へと忙しいですね。喜んでいるのは実家を守ってくれている猫ぐらいです。夜中は爆風で何度も目が覚め怖い思いをしましたが、翌日昼頃には晴れ間も見え、さっそく夕方には有田へ。見回りです。多少小枝が折れたりしているものの、被害もなくホッとしました。裏山の栗が沢山落ちているのを見て「あぁ、秋の準備ちゃんとしていたのね」と思うと、あの暑かった夏が急に愛しく思えてなりません。不思議です。というか、人間て勝手ね~。

 その避難準備最中にもかかわらず、家の近くの野菜や果物の販売所で品定めをしていたら、夫がシソ(大葉)の束を持ってきて100円だと言います。ちらっと見ると花の穂が見え隠れしており、もう終わりがけで葉も小さく、私としては「う~ん」と思ったのですが、束で100円という甘い誘惑に負けて購入してしまいました。しばらくは水につけて元気にさせてから穂や花はしごいて摘み取り、白身魚の刺身の醬油に浮かべてかすかな香りを楽しみ、大量の葉はジェノベーゼソース風に仕込みました。バジルの代わりに大葉を使うのです。

 作り方は簡単で、物言わぬ私の「召使い」のフードプロセッサーに大葉、にんにく、アンチョビーフィレ、ケイパー(地中海沿岸に自生する木のつぼみの酢漬け)、塩、オリーブオイルを入れ、ペースト状になるまでかくはんします。イタリア料理やフランス料理のソースとして、また隠し味として使います。私はパスタやパンに直接つけて食べたり、野菜にブリなどを載せてオリーブオイルやバルサミコとともにカルパッチョとして自由に楽しんだりしています。

 今回はその大葉の香るジェノベーゼソースを利用したスパゲティーとスープ、サラダのランチです。イガ栗を見つけてから秋の始まりを感じ、陶器や飴釉のお皿を出してはみたのですが、熱中症警報が出るほど暑い今日の食卓には暑苦しいものがありましたので、さわやかな大葉の香りとともに夏の名残を感じる器として、このお皿を選びました。彩(だむ)工房の納富彩子さんの作品です。生地をたたら(板状)にして器の形に成型し、呉須(ごす)を含ませた太い筆を巧みに使う「濃」(だみ)という技法で描いています。描いた模様に線を掻き落としてリズミカルな模様に仕上げています。形、風合い、使うたびにいつも新鮮で、これも飽きの来ない器の定番です。

 合わせたカップはスウェーデン・ボダノバ社のもので、直径10センチ高さ8センチ容量は余裕の250ミリリットル、ぽってりと適度な厚みがあるが大きさの割には軽く、持ち手の丸いところが可愛らしくスープ用として使っています。

 サラダはガラスのコンポートでさわやかに。お皿との高低差をつけました。自家製ドレッシングは面白い形の小瓶で遊んで。ハーブソルト&ペッパーはフランスのお土産にいただいたもの。

 暑さに負けず咲いてくれているサルスベリの花を庭から一枝、玉ねぎを縦に引っ張ったような形の焼き締めの花器に挿してみました。20年ほど前に購入しましたが、色も形もさりげなく、おちょぼ口で一枝の花も引き立ち重宝しています。

 夏の名残を楽しんでいたら、台風12号・13号・14号ですって。また、パソコンと貴重品と食べ物を持って避難しないといけなくなるのかしら~。何事もないことを祈ります。皆様も残暑の中ご無理をなさいませんように。

メニュースパゲティー大葉のジェノベーゼ、かぼちゃのスープ、クリーンサラダ、自家製ドレッシング
染付搔き落とし8寸皿 納富彩子 彩(だむ)工房(有田焼)
カップ(大・白) ボダノバ(スウェーデン)
ガラスコンポート ウイリアムズソノマ(アメリカ)
ハーブソルト&ペッパー お土産 フランス
ガラスの小瓶 いただいたもの
カトラリーティファニーブティック(イタリア)
ランチョンマットフランフラン(東京)
サルスベリの花
焼き締め雫型線彫り花器 赤井倉(波佐見町)