九州発!田中ゆかりのテーブル通信[25]10月:癒しのお茶の時間はお気に入りの器で

 10月も半ばとなり朝夕はしのぎやすくなりましたが、ここ九州は連日の30度越えで、秋なのに心と体が思うようについていきません。8月のお盆を過ぎたら白いワンピースは着るまいと決めていたのにもかかわらず、衣替えもできないままに今日に至っています。

 しかし自然界に目をやると、季節を守っているかのようにお彼岸には彼岸花が咲き、今では庭先にススキの穂が風に揺れています。不思議ですね。家の裏山には栗の木があり、イガグリが落ちてきます。先日、夜に窓を開けて入浴をしていたら何者かが裏山を歩くような音が聞こえ思わずギクッとしたのですが、翌朝家の周りを見回ったところ、犯人は栗を狙ったイノシシだと判明しました。人間より先に食べに来るからすごいですよね。

 この季節は九州北部で収穫を感謝して奉納されるお祭「おくんち」が開催されますが、この時期に決まって各家庭で作られるのが栗おこわ。「美味しいけど栗をむくのがね~」という声が聞こえてきそうです。そうなんです!栗は鬼皮と渋皮のダブルガードなので、手強いのです!でもね、秋ならではのご馳走を口にするためにも、ちょっとだけ頑張ることにします。私は栗ご飯派です。普通にご飯を炊く要領で、米と水と少しの塩と醤油と料理酒とむき栗を入れ炊き上げます。素朴な栗の甘みとほのかな木の香りと言いましょうか、父が好きだったもので思い出とともにいただきます。

 さて今月は、その栗を使った簡単なスイーツと私だけの癒しのお茶の時間をご紹介します。まず、超簡単ゆかり流マロンシャンテリーを作ります。栗は一晩水につけておいたものを殻ごと30分ほどゆで、冷ましたのち包丁で真二つに割り、実をスプーンでかき出します。(多少粒感があった方が食感も楽しめます。)生クリームにグラニュー糖とブランデーを加え泡立てます。お皿にあっさり目のカステラと栗、生クリームを盛り付けて、出来上がり。簡単でしょ~!カステラが別のお菓子に大変身!おかわりのゆで栗はかごに入れて。

 写真のお皿は有田焼、直径12センチ高さ3センチの白磁の高台皿、現代の名工、奥川俊衛門作です。上等の土を練り、熟練のろくろで製作された高台皿は品格と優しさの両方が漂い、8ミリほどの円縁が中の料理を引き立ててくれます。もう20年ほど愛用しています。
 紅茶はお好みで。私はアールグレイやダージリンなどティーポットで多めに入れます。ガラスのティーポットはマリアージュフレールのもの。数年前にフランスを旅した記念に購入したものです。アラジンのランプみたいなハンドルが気に入りまして、手荷物で持ち帰りました。ティーカップ10杯分は余裕で入ります。フレーバーティーなどを入れる際は、陶器や磁器のポットだとにおいが移りやすいのですが、ガラスだと気になりません。
 カップは練りこみという技法で、可愛い花柄なのに色が甘すぎないところが気に入っています。練りこみとは色の異なる粘土を練り合わせたり、組み合わせたり積み上げたりしながら模様を成形していきます。その粘土はどこを切っても金太郎飴のように同じ柄が出てきますが、立体の器になると模様が微妙に歪んで絵付けでは味わえない魅力となるのです。柄もさることながら、やや大ぶりでゆらいだ形は手にするとほっとして癒されるのです。最近、練りこみが「かわいい」と女性の間で人気だそうですが、これは佐賀在住の八戸窯・西岡孝子作、20年ほど前に手に入れたものです。

 テーブルの花はテラスで初夏からずっと咲いてくれた名残のベゴニア。ほんの一輪挿しただけなのに、明るくなりました。私の癒しのお茶の時間はいかがでしたか?ちょっと一息、元気が出たかしら。そろそろ栗色のワンピースでも着てみようかな。

メニューアールグレイティー、ゆかり風マロンシャンテリー
白磁円渕高台皿 奥川俊衛門(有田焼)
花模様練りこみマグカップ 八戸窯・西岡孝子作(佐賀)
ガラスティーポット マリアージュフレール(フランス)
かご 雑貨屋にて購入
カトラリー打ち出しケーキフォーク 雑貨屋で購入
ベゴニア
ガラス花器 はなわくすい(波佐見)