サンリツ服部美術館(長野県諏訪市)で12月5日まで、展覧展「江戸のやきもの」が開かれている。
天下泰平の江戸時代は芸術文化が花ひらいた時期。磁器の生産が始まり、絵付の技法が導入されて、装飾性の高い作品が生み出された。枯淡の美に価値をみた先の時代から一転、江戸時代のやきものは装飾性に富み、華麗にして豪華。けんらんの美が妍(けん)を競ったようだ。
同展では重要文化財「色絵牡丹鳥文大皿」(17世紀)をはじめ、「色絵獅子牡丹根菜文鉢(伊万里金襴手)」(18世紀)、「色絵花文大皿(古九谷)」(17世紀)、「瀬戸市場手茶入 銘 忘水」(17世紀)など同館所蔵の陶磁器約40点を紹介している。このうち、口径36㌢の「色絵花文大皿(古九谷)」は、青味がかかった素地に枝葉を描いた赤・緑・黄・紫の発色が美しい作品。枝葉や蔦が裏面にまであふれ、高台内側には「福」の字が記されている。茶陶では、小堀遠州の美意識が捉えた「瀬戸市場手茶入 銘 忘水」が注目される。「肩がまっすぐに張り、裾から底に向かって引き締まったくっきりとしたかたちの茶入で、左右の肩先から流れる黒釉が胴のあたりで落ち合い、一筋のなだれとなっている」。銘は『風雅集』集中の歌から。来館者からは、「桃山時代に確立した茶の湯だが、江戸時代には新しい時代に合った道具を使った茶会が開かれていたのかな」といった感想も。
担当学芸員の藤生明日美氏は、「本展を通して、江戸時代に深化を遂げたやきものや、新しい時代にふさわしい茶道具を生み出そうとした人々の姿を感じていただければ」と話している。