「齊藤勝美 ただひたすらに彩磁をもとめて」が、栃木県の佐野市立吉澤記念美術館で開催されている。
板谷波山が完成させた釉下彩技法「彩磁」で、現在最も高い到達点に至っている作家の一人である、齊藤勝美氏に焦点を当てた特別企画展。齊藤氏は1958年栃木県の現宇都宮市生まれ。板谷波山の彩磁に憧れ、独学で追求。他に類を見ない多彩な色表現を達成している。
展示は2部構成。1部では彩磁の技法と、作品の見どころを紹介している。グラデーションによるやわらかな色彩表現に、緻密な彫刻表現も加わり、鳥たちや季節の花々に豊かな生命感が吹き込まれた作品がならぶ。
2部では40年間の作陶の歩みを披露。ここではキャリアのちょうど半分。20年目のある出来事を境に、作品に大きな変化が見られ興味深い。ある出来事とは、映画「HAZAN」(五十嵐匠監督、2003年)への参加だ。齊藤氏はその表現力、技術の高さを見込まれ、俳優への技術指導のほか、劇中で使用され割られる「波山作品」の写しを制作した。その中で初期の波山がアール・ヌーヴォーを意識した曲線の多い作品を作っていることに影響を受け、それまでの端正な作品から、自身の作風にも変化が現れる。さらに近年は一層の抒情性をそなえた彩磁、また彫文白磁に取り組み、新境地を見せている。
同展では 初期から近年に至る氏の主要作品と波山作品も交えた約85作品(前期後期で入れ替えあり)により、卓越した技術に支えられた美の世界を紹介している。
同展は会期を当初の5月9日から7月4日に大幅延長している。また同展サイトでは、展示作品の一部の拡大写真や解説を公開している。詳細は同美術館サイトを参照。