涌波まどか氏の初個展「縄文を想う」

 「陶芸家 涌波まどかの風土―縄文を想う―」展が2月3日~3月2日、日本橋木屋 東京ミッドタウン店で開催された。
 涌波(わくなみ)氏は小石原焼の窯元生まれ。大学卒業後京都府立陶工高等技術専門で陶磁器成形科・研究科を修了、清水で京焼青瓷の技法を受け継ぐ4代目・涌波蘇嶐(そりゅう)氏と結婚した。夫婦で2産地の技をハイブリッドしたブランド「蘇嶐窯」を設立、4代目の青磁に飛鉋を施す新しい青磁の表現に挑んでいる。
 初個展のテーマ「縄文」は、2年前に夏休みの宿題で子息が作ろうとした火焔式土器に始まる。「こんな素敵な造形物を作っていた!縄文人ってすごい。ここから縄文の土器や土偶の魅力にはまり世界が広がった」と話す。さらに土偶がモチーフの作品をつくっている中で、ただその時間を楽しんでいる自分に気がついた。「京都と福岡の『ちがう』が混ざりあった蘇嶐窯。そこにさまざまな縁から、人や技術や思いが和えられ、また新しいものが生まれる。ベースは大切にしつつ、変化を楽しみたい」と言葉を続ける。
 同展では土器を写した「藍釉水煙土器」や、京都の組みひもを巻いた花器などの大物から、マグカップや、蓋物、さらに縄文ファンが気軽に手に取れるようにと制作した土偶の付いたヘアゴムや、同箸置きなど大小約100点近くが会場を飾る。「縄文をリスペクトして新しい世界観を表現することで、興味を持つ人が増えたり、より縄文を身近に感じられるアイテムを作っていけたらと改めて思う」と同氏。
 初代涌波蘇嶐は、明治・大正期に活躍した京焼青瓷の第一人者、初代諏訪蘇山の薫陶を受け技法を受け継ぎ、以後涌波家は4代にわたって京都・清水の地で作陶する。涌波家の青磁は、生地に顔料を練り込み、施釉によって深みのある青を表現。まどか氏は2015年、京都市が実施する、市内で活躍する伝統産業中堅技術者を業界牽引の担い手とする「未来の名匠」に認定されている。