クラフトマンシップ息づく作品展示「近代・現代陶磁の美」 横山美術館

 「じだいをつなぐ 近代・現代陶磁の美」が、名古屋市の横山美術館で、3月1日まで開催されている。
 明治時代、超絶技巧により世界の注目を集めた日本の陶磁は、大正から昭和時代にかけて工芸と工業に分化していく。美術や陶芸作家という概念が生まれる一方、近代的な組織や設備を背景にした陶磁器の大量生産が始まった。しかし大量生産の只中でも、鑑賞を目的とする飾り皿やフィギュアリンなど、職人技が存分に発揮された手作りの優品も生み出されていた。
 日本陶器(現・ノリタケカンパニーリミテド)は、大規模な工場の建設や機械化を進める一方、職工の社内教育にも力を入れ、優れた画工を育てていた。その中には西洋画の画壇でも活躍する者が現れる。今年没後50年を迎えた市ノ木慶治(1891~1969)はその代表的な存在だ。市ノ木は14歳で森村組の絵付け工場に入社。昭和初期から日本陶器の西洋画部の指導に関わっている。名古屋画壇で活躍する一方、優れた絵付けを残し、自らが絵付けした作品に個人の名を書き込むことを許された初めての画工とも言われている。
 キャンバスに描かれた油絵と、陶磁器への絵付けは、一見同じように見えても、そのテクニックは全く異なるという。例えば油絵では色を塗り重ねて表現するが、陶磁器の場合上に絵の具を乗せると下の絵の具を消してしまう。白は、陶磁器の場合絵の具を塗らないことで表現するなど、油絵と絵付けでは同じものを描くのでも、全く異なるテクニックが必要となる。
 同展では市ノ木作品を含む174点を展示。クラフトマンシップの息づくプレミアムな作品を楽しむことができる。