戸栗美術館、「青のある暮らし―江戸を染める伊万里焼―」を開催

「染付白抜蛸唐草文蓋付碗」 伊万里 江戸時代(18世紀前半)戸栗美術館蔵

 江戸時代の人々を魅了した「青」という色彩に着目した「青のある暮らし―江戸を染める伊万里焼―」が、東京・渋谷の戸栗美術館で、9月22日まで開催されている。
 染色技術が向上した江戸時代、藍染は庶民層にも広がり、人々は暮らしの中で、浅葱(あさぎ)、縹(はなだ)、濃藍(こいあい)など、濃淡さまざまな「青」をまとい、手ぬぐいなどの身の回り品にも盛んに「青」を取り入れていた。
同じ頃佐賀・有田の窯業地では、白い素地に青色の文様を表した染付の伊万里焼が、主力製品として生産されていた。時代の流行を敏感にキャッチし、新しいものを取り入れ続けた伊万里焼。18世紀には需要層の拡大や食文化の発展などに伴い、染付の食器を中心に、生産量を増大させている。ちなみに染付は、藍染にちなんでその名がつけられている。
 同展は染付とはに始まり、その技法や用途の変遷を丁寧に紹介している。17世紀前期のまだ技術が安定しない時期から、わずか半世紀ほどの間に技術革新を重ね、17世紀後半には「青」の濃淡を巧みに使い、柔らかなぼかしや繊細な線描写を駆使した優美な染付の器が作られるまでを、実際の伊万里焼を見ながらたどっていると、当時の陶工たちの向上心や積み重ねた努力の程が伝わってくる。
 江戸時代の料理本の挿絵をもとに、食器の構成などを再現した展示も面白い。写真の「染付白抜蛸唐草文蓋付碗」もそのひとつだ。蓋付碗は、18世紀後半以降に生産量が増加。当時温かい料理を食べることが広まったのが要因という。蓋付碗と一口にいっても、蓋が内側に入り込むタイプや漆器を模した平蓋などさまざま。蓋が外側にかかるタイプは「平碗」と呼ばれ、煮物などを入れる器だった。