九州発!田中ゆかりのテーブル通信[64]2月:1人で雛のお茶会

抹茶(天授・京都小山園)、雛あられ、イチゴ大福、桜餅、ヨモギ餅

 「寒い寒い」と言っていたら2月になり、ここ九州でもまた大雪情報。雪に慣れていない私は車の運転など、ドキドキです。ニュースで北日本の豪雪による多くの被害を知り、自然の脅威に胸が震え、痛みます。心からお見舞い申し上げます。

 1月後半になると梅の便りも届いているはずなのに、2月14日にやっと福岡県太宰府天満宮の「飛梅」が開花したことを知りました。例年に比べるとひと月ほど遅いそうです。

東風吹かば 匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春な忘れそ

 この歌は、菅原道真が901年に太宰府に左遷され、都を発つ時に読まれた和歌として有名です。庭の白梅に話しかけるように「我が家の梅の花よ。東風が吹いたら、私のいる太宰府まで匂いを届けておくれ。主人がいないからといって、春を忘れてはならないよ」というものです。「飛梅」は、道真公を慕って一夜のうちに京都から飛んできたと言い伝えられています。極早咲き八重の品種で、毎年境内の梅に先駆けて開花し、それを合図とするかのようにほかの約200種類・6000本の梅が咲き始めます。満開になると、境内は梅の良い香りに包まれるそうです。

 何とか「飛梅」から春の便りも届いたところで、そろそろ各地でひな祭りが開催されます。私の地元近隣では佐賀県有田町の「雛のやきものまつり」、佐賀市の「佐賀城下ひな祭り」、福岡県柳川市の「ひな祭り・さげもんめぐり」などがあります。

 さて、私もお雛様を飾ろうかな。皆様もご存知のように私は色々と収集癖があるので、お雛様も何組か持っています。今年は「そうだ、小さなお雛様を飾ろう!」ということで、玄関を開けた靴箱の上のスペースに。


 このお雛様は有田焼・磁器製の立ち雛です。男雛が高さ6.3センチ、女雛が4.3センチと、片手ですっぽりと握れるサイズで、何とも可愛らしく、眺めていると思わず微笑んでしまうのです。屛風(びょうぶ)も毛氈(もうせん)もやめて、時代物の根来塗(ねごろぬり)のはつり銘々皿を組み合わせてみました。我が家のカジュアルモダンな玄関にぴったりです。

 玄関が整ったところで、今月は自分で自分をおもてなし。一人で雛のお茶会をしようと思います。まず、梅の花をかたどった桃色の小皿に雛あられを。これだけで一気に春めいてきました。主菓子は何と、3個も選んでしまいました。オホホっ!

 イチゴ大福、桜餅、ヨモギ餅です。よっぽどストレスが溜まっているのかしら。ためるのはお金だけにしないとね~(笑)。でも、大丈夫。最近のお菓子屋さんは健康ブームを反映してか、写真ではわかりづらいのですが、商品のサイズが小さいので、ご安心ください。太鼓のような面白い形をした白磁の盛皿に盛り合わせてみます。この盛皿は以前の記事、テーブル通信[39]12月:私のお正月はシンプルにでもご紹介していますが、この時はお正月の口取りをのせています。ローストビーフなどもいいですよ。直径25.5センチ、高さ6.5センチ、高台だけに料理やお菓子が映えますよ。「え~い、皆のもの頭が高い~、下がれ~、控えよ~」って雰囲気です(ふる~っ)。これに、煤竹(すすだけ)のお箸を添えて。

 取り皿は同じく白磁の陽刻紋の銘々皿。端正なこの皿を加えると、きりっと気持ちが引き締まります。お抹茶碗は唐津焼の三島手です。大変手取り感も良く、優しくぽってりとした味のある釉薬のせいか骨董品のような雰囲気さえ感じます。華やかさも欲しかったので、根来塗の丸盆を合わせてみました。ただひとつ、間に合わなかったのが桃の花。今はまだ硬いつぼみです。花屋さんに一枝見つけたものの、花がしおれていて瀕死の重症でした。購入する気にはならず、造花を入れることにしました。

 花入れは、昔お友達にいただいたものです。げんこつを握ったくらいのまるで石のような陶器の花入れ。その石から一本の管のようなものが出ているので、そこに一枝入れます。お稽古の残りの花でも、お庭の花でも一本挿すだけでパッと決まる優れものです。

 自分で自分をおもてなし、ほのぼのとしたお茶会でした。お気に入りの器で久しぶりにいただいたお抹茶の美味しいこと。寒くて硬くなっていた体がほぐれていくようでした。しかし、イチゴ大福はなぜあんなに美味しいのでしょうか。果肉とプチプチの種の食感、甘酸っぱさとあんこの絶妙なハーモニー、それを優しく包むおもち~。思わず目を閉じて味わってしまう私。一つで2度美味しい!イチゴ好きな方にはたまらない逸品です。最初に考えた人凄いですね!
       

メニュー抹茶(天授・京都小山園)、雛あられ、イチゴ大福、桜餅、ヨモギ餅
抹茶碗 陶ぼう空・府川和泉作(唐津焼)
essence of life 晴 豆皿 梅 西海陶器(波佐見焼)
白磁太鼓型盛皿 光春窯(波佐見焼)
白磁陽刻紋銘々皿 石丸陶芸・林九郎窯(波佐見焼)
根来塗・モダン菊丸盆 祖父江ジャパン(名古屋)
煤竹箸 山下工芸(大分県)
造花・桃の花
陶器花入れ うさぎ窯(三川内焼)
お雛様立ち雛 草山窯(有田焼)
根来塗はつり銘々皿 時代物