九州発!田中ゆかりのテーブル通信[9]5月:ステイホームで新茶を味わう 心も体もリフレッシュ

  夏も近づく八十八夜~

 明治時代に作られた「茶摘み」という唱歌です。
 昔の話で恐縮ですが、母の実家には自宅の裏に茶工場があり、私も子供の頃に茶摘みを体験したことがあります。それゆえ、お茶はとても身近な飲みものでした。ここ九州も各県茶の産地があり、それぞれ銘茶が作られています。
 立春から数えて88日目の5月1~2日は、お茶を摘み取り始める目安の日とされてきました。また、米を作るための稲の苗を作り始めるのもこの頃で、「八十八」の文字を縦に重ねると「米」の字になります。「八」は末広がりで縁起を担ぐのが好きな日本人にとって、旬の味とおめでたい特別な意味があるようです。その日摘み取られたお茶は「八十八夜摘み」といわれ店頭に並びます。
 さて、この茶ですが原産は中国で学名をカメリア・シネンシスと言い、ツバキ科の常緑樹です。自宅の庭には茶の木がありますが秋から冬にかけて白い5弁の小さな花を咲かせ、茶色い小さな実はツバキの実にそっくりです。
 しかし、中国のお茶が日本に伝来したのがいつなのかははっきりしていません。遣唐使や空海などの留学僧が茶を持ち帰ったと考えられていますが、日本の喫茶の基礎を築いた栄西禅僧は、鎌倉時代に中国に留学し1911年帰国の際に茶の種を持ち帰り、上陸した地の長崎平戸の寺と佐賀脊振山の寺に蒔いたという記録が残っています。栄西が著した「喫茶用養生記」の飲み方は「抹茶法」でした。1654年には中国から来日した隠元禅僧らによって「淹茶法」の飲み方がもたらされたといわれており、それが江戸時代になると庶民の間にも手軽な飲み方で一般化していきます。急須や土瓶などに茶葉を入れて上から湯を注ぐ飲み方で、それが現在も続いているのです。
 美味しいお茶は、そのお値段もさることながら、お水・茶葉や湯の量・温度と抽出時間に気を付けて淹れたいですね。茶器もお茶の種類によって形や大きさなど異なりますので、ちょっとこだわってみましょう。まず、碗は茶の緑が映えるように白磁を選びます。
 玉露は50度前後のお湯でじっくりと淹れると、うまみ成分のテアニンが引き出されます。茶葉は一人4グラムと多めで抽出時間は2分半と長め、湯の量は40ミリリットルくらいです。ゆったりと落ち着いて淹れ、舌の上で転がすように味わいたいものです。上の写真では、本来はお酒に使う杯を玉露碗に見立ててお茶を淹れ、茶器(玉露宝瓶)、湯冷まし、豆皿とともに白磁手彫りのモダンなプレートに乗せてセットにしてみました。これは一人でこっそりぜいたくしたい時に。

 上級煎茶は小ぶりの急須で湯の温度は60度前後、茶葉は3グラムで抽出時間は1分くらい、最後の一滴まで絞り切ることが大事です。2煎目は少し温度を上げて抽出時間は短くします。煎茶は産地やグレードなど味わいも千差万別なので、飲み比べたりするのも楽しいものです。ペットボトルのお茶も便利でありがたいのですが、一杯のお茶でも、お気に入りの器があれば満たされること間違いなし。さあ、心も体もリフレッシュしましょう。

メニュー玉露、佐賀・嬉野茶、マスカットシロップ漬け、チェリーチョコ
玉露宝瓶 GREEN TEA HOUSE「茶の葉」
湯冷まし GREEN TEA HOUSE「茶の葉」
白磁スクエアプレート 一真窯(波佐見焼)
白磁スクエアミニプレート 一真窯(波佐見焼)
杯 白山陶器(波佐見焼)*玉露碗に見立て

小急須 うおがし銘茶「茶・銀座」

丸カップ ライン 一真窯(波佐見焼)
茶托
テーブルクロスファブリック(フィンランド)