東京銀座のATELIER MUJI GINZA Gallery1で「白 の中の白展―白磁と詞(ことば)という実験。」が7月5日まで開催されている。モダンデザインの貴重なプロダクトを所蔵するインテリアデザイナー・永井敬二氏のコレクションから白い器を中心に50点以上が一堂に会している。
同展はこれまでの絵付けのための地肌であった白磁が20世紀に入り白という色と、形を得て白磁食器として知られる4部で構成する。ロシア・シュプレマティズムのアーティスト、カジミール・マレーヴィチがデザインした白のティーセットにはじまり、中心となるのは「ドイツの名窯。そしてバウハウスの水脈」。トゥルーデ・ペートリの「ウルビーノ」(KPMベルリン)、ジャスパー・モリソン「ムーン・ホワイト」(ローゼンタール)といった現在も愛され続けている名作のティーやコーヒーポット、カップ&ソーサーがずらりとならび、白磁の色の幅、シャープなフォルムが白で強調されていることに驚かされる。
続く「東洋の白い器。柳宗理と森正洋のことば」コーナーでは中・韓の作家ものと窯もの、永井氏が個人ギフト用としてデザインしたティーカップ&ソーサー、森正洋のしょうゆ差し3種(白山陶器)、柳宗理のティー関連4品(松村硬質陶器)をピックアップ。村松硬質陶器は1902年に名古屋に設立された合名会社で、英国製硬質陶器に準じた西洋食器を日本で最初に工業的に製造した。また壁面には、柳があるインタビューで「50年代、白無地の器は『半製品』『便器』と呼ばれた」と、森は「白いいろ、白い陶磁器、それは素(しろ)い材料ではない。白くするための多くの技術的処理をして作り上げた近代的な人工の材料である」と掲げられている。同展キュレーターの田代かおる氏は「白をいかにして獲得したか。今ではシンプルで平凡な白も手放せば失うこともあるということを意識にのぼらせてみたかった」と話す。
このほか独自の試みとして、プロダクト作品と共に、ゲーテや、同展タイトルにもなっている20世紀の前衛詩人、北園克衛の詩の一節を含む古書など、Gallery1 のセレクトで白への思索を巡らせた「詞ことば」を綴る書籍10冊も紹介している。