企画展「土岐市の古窯-郷ノ木古窯跡群-」が、岐阜県の土岐市美濃陶磁歴史館で、11月24日まで開催されている。
土岐市の南東部に郷ノ木窯と呼ばれる古窯跡群がある。安土桃山時代から江戸時代前期にかけて、操業していた窯で、複数の大窯と連房式登窯で構成されている。発掘調査が行われていないため、不明な点も多いが、採集された資料などから、大窯期には長石釉を施した皿や鉢、それに錆釉の擂鉢などが、連房期には鉄釉や鉄釉に灰釉を流し掛けた碗や皿、壺などが焼かれたと見られている。
注目されるのは郷ノ木窯から、繊細なタッチで文様の施された志野の陶片や天目茶碗が出ていることだ。郷ノ木窯の南には、名古屋と信州飯田を結ぶ中馬街道が通っており、その付近には大川古窯跡群・水上向古窯跡群・田ノ尻古窯跡群・猿爪古窯跡群(瑞浪市)が点在。郷ノ木古窯跡群とともに、中馬系の古窯群を構成している。その中の一つである大川東古窯跡群では、昭和52年に発掘調査が行われ、天目茶碗や志野製品(皿・向付)が生産されていたことが分かっている。ただ品質を比べると郷ノ木古窯のものは、同時代に美濃桃山茶陶を生産していた久尻や本屋敷窯などと遜色のない、質の高さが見られるという。
同展では、これまであまり紹介される機会のなかった郷ノ木古窯跡群を取り上げ、その製品の種類や特徴を紹介するとともに、同時代に稼働していた他窯の製品も展示。約300件の展示資料により、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての各窯場の多様性について紹介している。