波佐見焼産地メーカー、マルヒロ(馬場匡平社長)は、自社ブランド「HASAMI」と「馬場商店(現・BARBAR)」の立ち上げ10周年を記念した書籍「MARUHIRO BOOK 2010―2020、2021―」を発売した。同書の刊行に合わせ、東京・中目黒で10月8~10日、ローンチイベント「マルヒロの今までとこれから」を開催した。
同書は10年余りに及ぶマルヒロの歩みをまとめたもの。特殊な装丁の総頁数700頁を超える豪華本(税込み2万2000円、限定100部)で、手がけたアイテムやプロジェクトのアーカイブ写真集と、用いてきた技法や技術に関する用語をまとめた事典の2冊で構成する。会場には、同書に記されたマルヒロがこれまで手がけた過去のアーカイブを展示したほか、新作「TRACE」などもならんだ。
馬場氏は08年、父先代社長からの要請で倒産寸前の家業に戻った。同年中川政七商店現会長である中川淳(現・中川政七)氏が「奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり。」を上梓し、同書の中で地場産地のコンサルタントを行うことを表明。同社はその第1号となり、そこから新ブランドの立ち上げが始まった。完成したのは「60年代のアメリカのレストランで使われていた大衆食器」をテーマにしたポップカラーの「HASAMI」だ。このマグが5万点を出荷するヒット商品となった。
新ブランドの雑誌掲載などが相次ぎ、同氏には多様な出会いがもたらされた。世界的なアメリカのフォントデザイン会社「ハウスインダストリーズ」と「ものはら」、スケボーブランド「EVISEN」とのコラボでは、伊万里鍋島焼の畑萬陶園がグラフィックを再現した。「EVISENからは、人間の手で描かれ再現されていることで驚愕され、職人からは腕をふるえたことを喜ばれた」と馬場氏。こうして幅広い分野で同社の知名度は上がっていった。18年社長に就任、合同展示会への出展をやめ、単独のポップアップや展覧会を催し、その中で転写シールのワークショップを行う。「若者たちにマルヒロの名を知ってもらい、親近感を持ってもらう。昨年オープンした私設公園HIROPPAもそういった思いから」と続ける。
帰郷当時の社員は6人、現在では20人超え、その多くが地元以外からという。