九州発!田中ゆかりのテーブル通信[30]3月:花の季節のおやつの時間

 1月は行く、2月は逃げる、3月は去るの、忙しい毎日ですね。この月は特に何かと慌ただしい月で、寒かった冬がやっと終わり新しい季節の始まりですと喜びたいところですが、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、テレビのニュースで爆撃やがれきの映像を見ては驚き、女性や子どもの泣き顔に、何もできない自分に心を痛めています。きっと読者の皆様も案じていらっしゃることでしょう。

 昨年末に花壇がイノシシに何度もほじくり返されて(ミミズを食べに来るらしい)耕運機をかけたようなデコボコ状態になり、すっかり勤労意欲をなくした私は、土から飛び出している球根をかき集め、とりあえず植木鉢に放り込んだのでした。しかし植物はたくましいですね。生きて、今週花を咲かせてくれました。可愛らしいミニスイセンです。これから桜をはじめさまざまな花が咲き始めると思うと、ほんの少し元気が出てきます。

 今月はささやかですが、春の喜びをおやつの時間に表現してみます。手前味噌になりますが、数年前に私がデザインをさせていただいたものです。メイン料理はもちろんですが、日本人が大好きな桜の花をモチーフにしたおもてなしプレートを菓子器に見立て、どら焼きとごまぼうろを盛り合わせてみました。お菓子をいただいた後にお花が現れるという趣向です。せっかくだからお抹茶も点ててみました。

 抹茶碗一つめは、唐津焼そば手、窯変により出来た「梅花皮(かいらぎ)」模様がその名のごとく、上からのぞくとまるで梅の木の皮のような迫力です。何年もの間、茶道のお稽古の度に「このお茶碗はいいですね~」と連発しておりましたら、先生がついに私にくださったという宝物です。私は茶道宗偏流に入門してから30年と年月だけは一人前ですが、お点前はいまだに劣等生で、コロナ禍や母の介護などもあってお稽古は止まったままで、破門寸前であります。とほほ。

 二つ目は、唐津焼系武雄焼粉引、沓形茶碗(くつがたちゃわん)です。沓形とは胴に歪みが加えられた形のもので昔の沓に似ていることから呼ばれています。重すぎず軽すぎず手に持った感じがとても良く、口当たりも優しく、作り手のロクロの技を感じるような碗です。先生に叱られるかもしれませんが、緑色との相性も良く時には塩ゆでした枝豆を入れたり、キュウリのぬか漬けを入れたりして一器多様に楽しんでおります。

 茶道とかお抹茶と聞くとむずかしく感じる方もいらっしゃるとは思いますが、抹茶にはビタミンCをはじめとした多くの有効成分が含まれ、抗がん、抗酸化作用、美白・美肌効果など広く知られているところです。

 めぐってきた花の季節に、あなたも一服いかがですか?

メニューどら焼き・桜どら焼き・ごまぼうろ(長崎・松翁軒)、抹茶(上林・幸の白)
おもてなしプレート「さくらさくら」(桃釉・青磁) 西海陶器(波佐見焼)
そば手抹茶碗 浜本洋好(唐津焼)
粉引沓形茶碗 峰松義人(唐津焼系武雄焼)
テーブルクロスパルファムド バガテール ル・ジャカードフランセ(フランス)