11月に入って急に寒くなり、気が付くとリビングからの眺めの様子一気に変わってきました。ススキの穂が開いて風に揺れ、木々も紅葉が始まっています。おそらく来週あたり(23日頃)は真っ赤になっているのではないでしょうか。ここは自然がいっぱいなのです。
心配していたコロナ感染も減少傾向となり、周りを気にしつつも、少しずつ日常生活が戻っていったらいいなと願うばかりです。有田や波佐見では秋の陶磁器祭りが開催され、お客様もちらほらお出かけになり品定めをされる姿を目にすると、何ともうれしい気持ちになります。
この1、2年は、ほとんどの方がお家で過ごす時間が多くなり、多くの発見があったことでしょう。私の場合は仕事以外の雑用が多くなり断捨離もあまりできていませんが、夫が毎日家にいると3食準備することになり昼近くになると、「お昼になったね。何食べる?」夕方になると「晩御飯どうするの?」と聞いてきます。そのうち夕食の買い出しにもついてきて、大きなイカ1杯を指さして、「これにしよう、胴は刺身にして足は天ぷらに」と言われると「こんな時間から私がイカの皮をむくの?うちは定食屋じゃございませんのよ!」と言いたくなってしまいます。「あっ、いけない、食事は食卓での奉仕、楽しくしなきゃ」と言い聞かせながら食器棚を眺め、いつもと違う食器を取り出しては手を変え品を変え、日々奮闘しています。夫は気づいていないと思いますが。
今回はそのマンネリ打破ということで、「遊び心を食卓におうちで紅葉狩り」です。簡単な一品ですから読者のみなさんもぜひチャレンジしてみてください。まず用意するものはニンジン、サツマイモ、ギンナンです。ニンジンは紅葉の型抜き、サツマイモはイチョウの型抜きで抜き、これを油で揚げます。厚みは薄いとパリパリのチップスに、5ミリくらいだと立派な一品という感じに仕上がります。ギンナンは殻や皮をむいて水煮した真空パックのものを同様に油で揚げます。どちらも熱いうちに塩をひと振りして、出来上がり。
秋冬になると赤絵や陶器をたくさん使いたくなります。器は黒唐津ドラ鉢、直径23.5センチです。ドラ鉢とは寺院で用いられる銅鑼のような形の鉢で、かなだらいのように渕の切り立った浅鉢のことです。鉢と言っても底は平たいのでお皿と同じような感覚で使えて、縁が立っているので特別感が増します。さらし玉ねぎと牛肉のたたきを盛ったり、和菓子を乗せて菓子鉢にしたり、色が黒なので食材が引き立つこと間違いなし。紅葉やイチョウやギンナンを吹き寄せ風に盛り、岩塩を削りふりかけました。吹き寄せとは、落ち葉が風に舞い庭の片隅に吹き寄せられた様子(落ち葉のかさなり、かたまり)をいいます。これをピックでつまみながら、まずはビールで乾杯。グラスはマイジョッキグラスで(実はやきものに負けないくらい硝子も好きなのです)。薄手のガラスを針のような鋭利な刃物で彫ったような美しい模様が気に入っています。お揃いでタンブラーが6個ありましたが、酔っ払いの犠牲になり残るは2個なり。大切に使っています。
仕上げに庭のホトトギスを一枝、小さな花入れに入れてみました。今回は吹き寄せのカラフルな料理が主役ですから、引き立て役で侘びた花を。花器は全体が石のような、口のところはピストルのようなちょっと不思議な感じですが、細い口は枝が止まりやすく花を入れると瞬く間に一体化し、素敵な食卓花になってくれます。テーブルランナーも抑えたグレーを選んでみました。
今年もあとひと月です。器に助けてもらいながら、食卓での奉仕、ますます頑張ります。
メニュー | ニンジンとサツマイモとギンナンの吹き寄せ風揚げ物、ビール |
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器 |
黒唐津ドラ鉢 土屋由起子(唐津焼) ジョッキグラス ジョン・ジェンキンズ(イギリス) ピック&ピック入れ メーカー不詳 |
花 | ホトトギス 黒焼き締め花入れ うさぎ窯(三川内焼) |
リネン | テーブルランナー ル・ジャカールフランセ(フランス) |