横山美術館、「魅了する 煌めく薩摩」を開催

 明治・大正時代に鹿児島をはじめ日本各地で作られ、海を渡り人々を魅了した、薩摩焼の名品を紹介する「魅了する 煌めく薩摩」が、名古屋市の横山美術館で、10月31日まで開催されている。
 煌びやかな金彩を施した鹿児島の薩摩焼は、1867年のパリ万博に出品されると、一躍注目を集めた。海外で好評を博した薩摩焼は、外貨獲得のための重要な輸出品と位置づけられ、本家の鹿児島だけでなく日本各地で作られるようになる。京薩摩、横浜薩摩など各地で生まれた絢爛豪華なやきものは、「SATSUMA」と呼ばれ、盛んに輸出された。
 同展では鹿児島の本薩摩のほか、京都、東京・横浜、名古屋、長崎、加賀、その他の産地別に約140作品を展示。会場は豪華に施された金彩で、まぶしいほどに煌めいている。
 産地別といっても、どこで作られたかはっきりしない作品も多い。元々白薩摩は薩摩藩に献上するために焼かれたため、窯元や職人の名前は入れないのが原則なのも、その原因の1つだ。また例えば素地は鹿児島から取り寄せ、九谷の職人を招いて横浜で絵付けをする、瀬戸や美濃で素地を作り、名古屋で絵付けをするなど、各地で素地が作られ、そこに各地の職人が複雑に関わることも、産地の特定を難しくしている。
 担当学芸員の原久仁子氏は「『ジャパンクタニ』として知られる九谷焼の赤絵磁器も、その細密画や金彩は薩摩焼に影響を受けて生まれたもののようです。また薩摩焼は、ヨーロッパで人気のあったシノワズリに日本的な意匠を折衷させながら、新たにジャポニズムを牽引しており、薩摩焼の美術史的な位置付けも感じ取っていただけるのではないか」と話している。
 「上絵金彩人物図弁財天紐香炉」は、本体と台部が別々に成形され、組み合わせて使用する作り。三彌舎は、東京・芝浦周辺にあった窯元とされるが不明な点が多い。
 学芸員によるギャラリートークが、第1・3土曜日の午後1時半から行われる。