掛川市の資生堂アートハウスでは、「美術品として扱われ、私たちの日常から遠ざかってしまった工藝品を、生活の場に取り戻すための試み」として、2015年から企画展「工藝を我らに」を開催している。これは陶芸、漆芸、金工、ガラス工芸などの分野から、5人の作家を選定し、その新作に同館が所蔵する工芸品や道具類などを取り合わせながら、暮らしの中での工芸品の用い方や楽しみ方を提案するもの。
19年にはメンバーを入れ替え、第1次メンバーの十四代今泉今右衛門氏を要に、漆芸の中條伊穂理氏と水口咲氏、金工の三代吉羽與兵衛氏、ガラス工芸の安達征良氏が新たに参加。現在、この2次メンバーによる「第二次工藝を我らに 第二回展 資生堂が提案する美しい生活のための展覧会」が、4月23日まで開催されている。
今回も元旦に始まる年中行事や、月見酒のような季節ならではの場面を再現する展示の中に、各作家による質の高い作品が配置され、見ごたえは十分。在宅ワークが増える中、中條伊穂理氏のきらびやかな螺鈿(らでん)を施した「デスクトップルーペ入れ」や「ボールペン」に、十四代今泉今右衛門氏の蓋付の香合を取り合わせたデスクなど、書斎をイメージした展示もある。
コロナ禍により、家で過ごす時間が増え、「これまで以上に身の回りで使う品々に関心が高まっている」と同館。「藝術性の高い工藝品は日常に彩りを添え、それに親しみ用いる日々は、深く豊かな悦びを私たちにもたらしてくれる」と、工芸の果たす役割を語っている。