九州発!田中ゆかりのテーブル通信[70]8月:涼を求めて

ホタテのマリネ、クルミパン、冷製パンプキンスープ、ロゼワイン

 線状降水帯などに脅かされた日本列島も、今はお盆を迎えました。被災された皆様には心よりお見舞い申し上げます。晴れの日が戻っても、すぐ日常に戻ることが困難な方が多くいらっしゃることを思うと、胸が痛みます。

 先日、東京の友人ご夫婦が旅行で博多にお越しになりました。「せっかくなので夕食でも」とお声がけをいただいたのですが、あいにく私は佐賀県の方におり、かないません。すると延泊して、私の地元までわざわざ足を延ばしてくださいました。そのご夫婦は有田や波佐見は初めてとのことでしたので、午前中は佐賀県の有田焼産地をご案内しました。泉山の磁石場(江戸時代に磁器の原料の陶石が採れていた場所)と、白磁染付の鳥居が美しい陶山(すえやま)神社、アリタセラ(有田焼卸団地)を巡りました。やきものの店が立ち並ぶ景色に驚かれたかもしれませんね。

 お昼は30分程度で済ませ、長崎県波佐見焼産地の「高山陶器」へ。こちらでは絵付けの体験ができるので、奥様は下絵付けを、旦那様は上絵付けの転写を体験されました。最初は戸惑いながらも、徐々に熱心になって取り組んでおられました。出来上がりは2週間ほどでご自宅に届きます。どのように焼けているかは帰ってからのお楽しみです。次に、テーブルウェアフェスティバルでお買い物をした窯元さんに行ってみたいとのことで、手彫りの「一真窯」と手描きの「大新窯」へ。どうやら買い足したいものがあったようです。ほかにも希望があったようですが時間切れとなりました。たったの一日でしたが、佐賀と長崎のやきものの町をご案内出来て、私にとって忘れられない一日となりました。

奥様が絵付けしたカップ&ソーサー(右)と旦那様が上絵転写を貼ったカップ(左)

 ところで、毎日が暑すぎて、火を使う料理はしたくないこの頃。夫に揚げ物や煮つけなどリクエストされると、「なぬ~!」と髪の毛が逆立ってしまいます。体が水分を欲しているのでしょうか、サラダが美味しいですね。それと野菜をスープで煮たもの。つめた~くしたら、いくらでも食べられます。そうです。この夏の一番のごちそうは「涼しさ」です。だから、メニューも器もとことん涼やかなものを選びました。

 器は波佐見焼「和山」の「sazanami」(さざ波)というシリーズです。名前からして、いかにも涼やか。白磁の薄手に飛びかんな模様が波打ち際に寄せる波のようです。そこに淡い色を差し、マットな釉薬をごく薄くかけてありますが、その質感は少しザラっとしていて貝殻を思わせるような手触りで、それが不思議な魅力となっています。ボウルの形も美しく、和食も洋食も越えた新しい感覚のお料理をのせたくなります。淡い5色のカラーバリエーションはどれも上品で、どれを選ぶか迷います。

sazanamiプレート(和山)の5色のカラーバリエーション

 この器と初めて出会ったのは、13~14年ほど前のこと。器の手触りの質感と美しすぎる装飾が斬新で、すごく驚いたというのが第一印象でした。「素敵でいいな」と思ったものの、ザラっとした手触りは当時としてはとても珍しく、食器として使うことに少しためらいがありました。最近はさまざまな素材感を楽しむ流れもあって、似た質感の器も増えてきたこともあり、改めて見直して使い始めています。この器は発売当時、時代を先取りしていたと言えるかもしれませんね。

 今月は冷たいパンプキンスープをボウルに、メインプレートにはホタテのマリネを。ホタテの上にキュウリのスライスを重ね、イクラを少々。塩・レモン汁・上等のオリーブオイルをかけたら出来上がりです。小ぶりのプレートにはパンを。もう1枚のプレートには、アボカドとトマトとモッツアレラチーズのサラダを2~3人分盛り合わせて。冷やしたロゼワインが合いそうです。ボトルのそばに見える白いものは、ウニを模した白磁のキャンドルホルダー。夜にキャンドルを灯すと、細かな模様が浮き上がってきて、ムード満点です。

 器と料理の涼やかな演出、皆様もチャレンジしてみてくださいね。

今、我が家の庭では珍しいハイビスカスが咲いています
メニュー冷製パンプキンスープ、ホタテのマリネ、アボガドとトマトとモッツアレラチーズサラダ、クルミパン、ロゼワイン
sazanamiプレート(大) 和山(波佐見焼)
sazanamiプレート(小) 和山(波佐見焼)
sazanamiボウル 和山(波佐見焼)
グラス コンランショップ(東京)
コースター 不詳
カトラリー スプーン DEAN&DELUCA(東京)
竹箸 山下工芸(大分)
インテリア キャンドルホルダー Luna Del Mar(イタリア)