現代陶芸の世界を分類して解説 外舘和子氏著「現代陶芸論」

 工芸評論家の外舘和子氏が現代陶芸の世界を紹介する「現代陶芸論」(A5判284ページ)がこのほど、阿部出版から刊行された。2970円(税込み)。

 現代陶芸の世界は、実用的な食器の姿をした作品から抽象的な造形作品に至るさまざまな形、またその装飾手法も掛け合わせれば、非常に多様だ。以前「日本近現代陶芸史」(阿部出版、2016年)をまとめたこともある外舘氏が、その多様な世界を陶磁史の視点から俯瞰(ふかん)して整理・精査することで、現代陶芸を分かりやすく紹介するのが同書だ。整理にあたっては、2つの基準として「創造性」と「実在表現」、4つの分類として「鑑賞主体のうつわ」「具象的陶芸」「自由造形的陶芸」「用途の陶芸」といったキーワードで現代陶芸の作品群を分け、その歴史や特徴を紹介する。

 その中でも「用途の陶芸」の分類では、「陶芸」という言葉を使いつつも「実用陶磁器」や「産業陶磁器」の世界にも踏み込み、さらに5つに細分化して紹介している。外舘氏はプロダクトデザインの陶磁器は「現代陶芸」とは区別されると説明する一方で、日本では一人の陶芸家がプロダクトデザインや民芸を手掛けることも多い点を指摘し、この分野まで踏み込んで分類する意義を示唆しているのが興味深い。

 各分類の解説では、より理解を深められるよう約200点の作品をカラー図版で掲載。そのいずれも現代陶芸を代表する作品であることから、同書はその名の通り「陶芸論」であると同時に、「現代陶芸ガイドブック」としても活用できるのがポイントだ。これから現代陶芸の世界の扉を叩くのであれば、本書をまず手に取り、さらに深く学ぶ場合は「日本近現代陶芸史」と読み進めると良いかもしれない。