初期伊万里や朝鮮陶磁を披露 戸栗美術館

「染付梅樹唐草文瓶」 伊万里 江戸時代(17世紀前半) 戸栗美術館蔵

 東京・渋谷の戸栗美術館で、開館35周年記念特別展「初期伊万里 朝鮮陶磁」が、3月26日まで開催されている。昨年開館35周年を迎えた同館。昨年4月からは、創設者である戸栗亨氏(1926~2007)によるコレクションを紹介する特別展を4回に分けて開催してきた。その締めくくりとなる同展では、古伊万里の原点である初期伊万里の魅力を、約80点の作品とともに紹介。さらに戸栗氏が愛した朝鮮陶磁コレクションの約30作品も一堂に会している。

 戸栗氏は「古伊万里のコレクションで日本一になる」という目標を掲げ、昭和40年代頃から20年ほどの間に、江戸時代を通観できる、充実した肥前磁器コレクションを築いた。今回展覧される「初期伊万里」は、古伊万里の中でも初期に作られたものだ。江戸時代には実用品だった伊万里焼は、明治以降「鑑賞陶器」として評価されるようになる。端正な作品が好まれ、色絵重視の風潮が強かった時代に、戸栗氏は「染付や白磁の、陶工たちの手痕が感じられるような、滋味あふれる初期伊万里も精力的に集めた」と同館。確かに完成度は高くないが、憧れの中国磁器目指してさまざまに工夫する陶工たちの姿が思われる作品が並ぶ。「染付梅樹唐草文瓶」は「竪筋形」と呼ばれ、かつて「李朝染付」として愛好されていたが、発掘調査により初期伊万里であることが知られるようになった作品だ。

 戸栗氏はまた、伊万里焼の祖である朝鮮の陶磁器に対しても親しみの眼差しを向け、「コレクションの主軸を古伊万里に定めてからも、気になった朝鮮陶磁を買い求めていた」という。このコーナーでは「雨過天青」を思わせる高麗青磁、素朴な風合いの青花など、氏が特に愛好した作品が紹介されている。