「アーツ&クラフツの陶芸」を同時開催 愛知県陶磁美術館

「花のピッチャー」 ウィリアム・ムーアクロフト 1919年頃 ジェイムス・マッキンタイア商会 国立研究開発法人産業技術総合研究所蔵(愛知県陶磁美術館寄託)

 特別展「アーツ・アンド・クラフツとデザイン―ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで」が、瀬戸市の愛知県陶磁美術館で、3月26日まで開催されている。

 アーツ・アンド・クラフツ運動は、19世紀のイギリスで、産業革命以降の機械化によって失われた手仕事を取り戻し、生活と芸術の一体化を目指した運動。同展では各地の歴史や文化、社会情勢を反映し、展開したアーツ・アンド・クラフツ運動の広がりと多様性を、イギリスとアメリカのテキスタイル、壁紙、タイル、ガラスなど約150点を通じて紹介している。東海地方でのアーツ・アンド・クラフツの大規模展覧会は14年ぶりとなる。

 陶磁器関係者にとって必見なのが、同館が同時開催する特集展示「アーツ&クラフツの陶芸」だろう。アーツ・アンド・クラフツ運動の影響は、陶磁器産業において「アート・ポタリー(芸術陶器)」という新たなジャンルをつくり出した。これは1870年代~1930年の間に制作された実用品ではない装飾を目的とした陶磁器のことをいう。多くの陶磁器メーカーは、この運動に共鳴する人々の需要に応えるべく、大量生産とは別に技術の高い職人やデザイナーを起用して、少量生産の芸術部門を設立。作り手たちは、土地固有の風土や文化と呼応しながら素材や釉薬の美しさ、デザインなどを重視したアーツ・アンド・クラフツの美学にかなうものを目指した。やがてアート・ポタリーは欧米だけでなく世界各地で発展を見せ、近代デザインを取り入れた陶磁器製作を確立した。

 ここでは国立研究開発法人産業技術総合研究所の陶器コレクション(愛知県陶磁美術館寄託)の中から、イギリスとアメリカのアーツ・アンド・クラフツ運動から展開した陶磁器を中心に展観されている。

愛知県陶磁美術館