赤木清士コレクションの全容 兵庫陶芸美術館

 「受贈記念 赤木清士コレクション 古伊万里に魅せられて―江戸から明治へ―」が、丹波篠山市立杭の兵庫陶芸美術館で8月29日まで開催されている。
 故赤木清士氏(1932~2019)の古伊万里を中心とするコレクションが、同館に寄贈されたのを受け、その全容を紹介する展覧会だ。赤木氏は建設業を営むかたわら、神戸異人館で出会った、文明開化に象徴されるランプの収集を始める。その情熱は日本の灯火具や、近代のものづくりと深く関わる科学技術史資料などへと広がっていった。
 陶磁器を集め始めたのは1965年頃から。鉄橋や電線が描かれた作品を愛好し、有田で作られた作品を中心に、他産地を含む200件以上のコレクションを形成した。江戸後期から明治期に作られた作品が多くを占めているが、全体を見ると江戸前期から昭和前期と制作時期の幅は非常に広く、産地も志田焼(佐賀県)や美濃焼(岐阜県)、九谷焼(石川県)などを含んでいる。コレクションの特長のひとつが、有田や美濃で作られた釉下彩の大皿や、銅版転写による装飾を施したうつわが多く見られること。文明開化による科学技術の発展や、軍国主義を投影した意匠からは、それぞれの時代の空気が伝わってくる。同展では装飾技術の進化にも注目。使用された道具類も展示されている。
 氏の収集に想いを馳せ、作品を集める楽しみや、氏が特に愛好した西洋人や空想上の異国人の意匠にも焦点を当てながら、234件488点のコレクションを一堂に紹介する同展。うつわに描かれた図様の魅力を再認識する展覧会だ。

兵庫陶芸美術館