フィンランドのグラスアート 富山市ガラス美術館

ティモ・サルパネヴァ《カヤック [3867]》 1954 年 コレクション・カッコネン(撮影:Rauno Traskelin)

 富山市ガラス美術館で1月29日まで、展覧会「フィンランド・グラスアート:輝きと彩りのモダンデザイン」が開かれている。

 フィンランドの8人のデザイナーと作家それぞれが職人との協働作業で制作した芸術的志向の高い「アートグラス」作品140件を紹介している。素材のガラスとどう向き合い、何を感得して創作の可能性を押し広げて行ったのか。作品は、作家たちのガラスに対する信頼と挑戦の過程を映している。


 写真はデザイナーの一人、ティモ・サルパネヴァ氏の「カヤック[3867]」。1954年、57年ミラノ・トリエンナーレに出品され、国際的な名声を得た作品だ。サルパネヴァ氏にとってガラスとは「既成概念や3次元から自らを解放し、心の奥深くを開いて四次元への旅に導いてくれる」存在であり、「アートグラス作品はコンセプトを抽象表現化したオブジェ」と捉える。したがって、「カヤックは決して皿ではなく、蘭やランセットもまた花器ではない。これらは精神を見つめ、光で照らし、解き放つための、ガラスによる彫刻」であり、物事のあり方を既成概念で捉えることを拒んでいる。

 土田ルリ子館長は「本展では、1930年代から現代に至るアートグラスに焦点を当てた。すでにデザインされてから80年ほど経っている作品もあるが、今なお新しさを失わず、現代の私たちの胸を打つ洗練されたデザインのものばかり。フィンランドの自然や風土に根差したものであるため、見る者の記憶を呼び起こし、共鳴するからだと思う」と話している。

富山市ガラス美術館