学生経営の地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」がオープン

「アナザー・ジャパン」の店内

 JR東京駅徒歩5分前の「TOKYO TORCH」街区に8月2日、学生経営と地方創生をかけ合わせた47都道府県地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」が開店した。7月27日にはその内覧会が行われた。

 三菱地所と中川政七商店(奈良市)の共同プロジェクトによる店舗で、三菱地所がプラットフォームを提供、中川政七商店が小売業のノウハウ教育、経営サポートなどを担当する。学生が仕入れから収支管理、店舗づくり、プロモーション、接客までを手掛け、「将来自分の働く場所として、地元を選択肢の1つにする」ことで、地方活性化に取り組む。第1期生の募集では「北海道・東北」「中部」「関東」「近畿」「中国・四国」「九州」の6ブロックから約200人の学生が応募。中川政七会長らが2日間かけて郷土愛、フロンティア精神をキーワードに面接のうえで18人を決定した。今年3月から中川会長から講義を受け、経営計画立案やビジョン策定などを実践。さらに店舗経営にまつわるすべてを担当するため、「プロダクト」(商品掛け率、売り場ディスプレイ、POP作成など)、「オペレーション」(納品・検品書チェック、シフト作成管理、取引営業資料作成、接客マニュアル策定、接客など)、「コミュニケーション」(ウェブサイト、SNS情報発信、マルシェ企画、プレス対応など)の3チームに分かれて店舗運営に携わりつつ、各地元を回ってバイイングにも当たる。

 プロジェクトは6エリア別に各2カ月で展開。第1弾の「アナザー・キュウシュウ」(10月2日まで)では「エリアメンター」として(一社)BRIDGE KUMAMOTOの佐藤かつあき代表理事が参画し、九州エリア(沖縄含む)出身の学生3人が九州そのものを「宴」に見立てて商品をセレクトし、販売プロモーションに至るまでを実践する。また週末には宴をさらに盛り上げる「余興」としてものづくりワークショップなどの店内イベントも企画。このほか運営費、出張費をまかなう目的でクラウドファンディング「REDYFOR」での資金調達にも取り組む。カフェ(42席、運営はbiplane)を併設した約130平方メートルの店舗では約350点を販売。大分、佐賀、福岡、沖縄の6事業所の食器類約40点のセレクトは、長崎県出身で早稲田大学の山口晴(せい)さんら3人が担当した。

 「皿山の動画で小鹿田焼を知った。大分の旅館の紹介で、坂本窯から特別に仕入れさせてもらった。副千製陶所の印象的な水玉模様は、私には新鮮に映ったが、母は『昔よく見た!懐かしい』と。見る人によって見え方の異なる点が面白い。有田・Tsukasa Designは、夏という季節との親和性や、メンバーそれぞれの地元のイメージから柄を考案したオリジナルの猪口を依頼した。高取八仙窯は、高取焼の400年の歴史の重みを感じた。学生のアイデアを作品づくりに反映させもらうことで、少しでも作品に関わらせてもらった。那覇・壺屋焼のイベントで陶器屋須藤と十九三窯に出会った。須藤の唐草模様の器は、日常生活でも使いやすい。十九三窯は鮮やかなブルーとガラス釉に一瞬で心を奪われた」と、山口さんはそれぞれの魅力を語った。

 中川氏は「商品セレクトには全く関与せず学生任せ。店舗の収支も当然、『ごっこ』ではない。赤字が続くとプロジェクト自体が頓挫するし、また2期生が参加したくなるような活動にする責任があることを伝えている」と話す。第2期は「アナザー・ホッカイドウ トウホク」が10月5日から始まる。

 「アナザー・ジャパン」は約5年を掛けて育てていく中長期型プロジェクトとして2021年12月に発足。三菱地所が東京駅日本橋口前に位置する常盤橋街区で開発を進めている「TOKYO TORCH」で、各都道府県出身の学生が自らの地元をPRすべく47都道府県地域産品セレクトショップを経営する。同店が第1期店舗。27年度には約1322平方メートルの第2期店舗を「TOKYO TORCH」内にある「Torch Tower」に予定している。