大阪市立東洋陶磁美術館(大阪市北区)で2月6日まで、企画展「受贈記念 柳原睦夫 花喰ノ器」が開かれている。このたびの受贈作品を含む柳原作品41点とともに、寄贈者でもある華道家・杉田一弥氏が柳原氏の作品に花を活けた写真作品16点を併せて展示し、タイトルが意図する「花を喰べる器」を具体的に追及している。
柳原睦夫(1934―)は富本憲吉に陶芸を学んだ。その後のアメリカ生活で抽象表現主義やポップアートに触れ、帰国後も金銀彩を用いた鮮烈な表現を試みたが、根底には常に陶芸への揺るぎない信頼があった。そして、陶芸は芸術として自立できるが、器の種類や場所、機会を組み合わせることにより他の芸術分野とも共存できるとの認識に至る。
同展では、1970年から2017年までの作品を作家の足跡をたどれるよう展示。主文様と地文様を黄と黒であざやかに塗り分けたキ・オリベのシリーズ「キ・オリベ後屈瓶」(1995)や「キ・オリベ花喰笑口瓶(かしょくしょうこうへい)」(1992)が代表作品である。このほか、壺が笑っているような印象を受ける「流水文笑口壺」(1986)、ギン・オリベと称する「縄文式弥生形壺」(2002)も混じる。花を生けた写真と合わせて展示した理由について鄭銀珍学芸員は、「『壺』や『瓶』といった名の柳原作品に実際に花を生けることでどのような関係性が生まれるのかを試みた。来館者が作品のみと花を生けた写真とを見くらべ、どのような印象を持たれるか」。色づかいといい、形といい、個性的というだけでは言い尽くせない魅力ある柳原作品の数々。「力強い造形性を楽しんでもらえれば」と話している。
大阪市立東洋陶磁美術館