小さな作品の濃密な世界 愛知県陶磁美術館

「灰釉蓮弁文水滴」 瀬戸 14世紀

 「水滴 小さき陶芸―大島国康コレクションを中心に―」が、瀬戸市の愛知県陶磁美術館で、9月26日まで開催されている。
 名古屋市在住の大島国康氏が、昨年度愛知県に寄贈した「陶磁水滴コレクション」計1062点から、約300点を選りすぐり披露する展覧会。陶磁製水滴の世界を概観するとともに、香合や茶入れなど同館の小型古陶磁を併せて展示。小さな作品に凝縮された、濃密な世界を満喫できる展覧会だ。
 大島氏の水滴コレクションは、14世紀の「古瀬戸」の水滴に魅了されたことに始まるという。また若手作家を支援したいという思いも強く、まだ無名の若手作家を見出し、水滴制作を依頼することもあった。その結果大島氏のコレクションは中世の古瀬戸から、近現代にわたり、個人による水滴コレクションとしては、日本屈指の規模と内容になっている。
 展示は2部構成。1部に展示されるのが「陶磁水滴コレクション」だ。最初に登場するのが、鎌倉時代・瀬戸窯の「灰釉蓮弁文水滴」をはじめ、桃山時代、江戸時代などの古陶の名品。「灰釉蓮弁文水滴」は、端正な器形で、実際に水切れもよく、造形美と機能美を兼ね備えた名品だという。大島氏が直接制作を依頼した「色絵花鳥図水滴」は、人間国宝の十四代酒井田柿右衛門の作。氏が早くにその才能を見出した赤絵細描の見附正康による「赤絵細康描花文水注形水滴」や、カエルやカメ、ウサギなどを意匠とする水滴などもならぶ。最後はコレクター本人が選んだ作品の数々。そこからは収集の精神を見て取ることができそうだ。
 2部では、香り、飲食、祈りで用いられた、小さな陶芸作品を紹介。手のひらサイズとはいえ、さまざまな技術を凝らした美の世界が展開されている。

愛知県陶磁美術館