横山美術館(名古屋市東区)で9月20日まで、企画展「近代日本の礎となった 明治・大正のやきもの」が開かれている。里帰りした明治・大正時代の輸出陶磁器を中心に、世界を魅了し続けた日本の技と美を堪能できる。
明治政府は国の近代化を急ぐため、殖産興業策の一環として陶磁器をウィーン万国博覧会(1873年)に出品。後に「ジャポニスム」として注目を集めるなど、華々しい国際デビューを果たした。異邦の人々によって光を当てられた日本の陶磁器はやがて外貨獲得のための重要な輸出品となり、国内各地の窯場で大規模生産される。
明治の超絶技巧に世界の関心が高まる中、再生するにも資料に事欠いた。そこで、ひとたび輸出した陶磁器を収集することに。すなわち、輸出陶磁器の母国日本への里帰りである。
本展では京焼、九谷焼、出石焼、萬古焼など日本各地で制作された明治時代以降の輸出陶磁器126点を紹介している。見どころの一つは、九代帯山与兵衛「上絵金彩花蝶図飾壺」。上絵のあでやかな色彩の花とチョウの戯れが目まいを覚えるほどの凄みをもって迫る京薩摩の飾壺である。花蝶を縁取り、蓋や頸部、底部の割文様に施された金彩は絢爛豪華そのもの。異邦の人々を釘付けにしたのも頷ける。
異邦のコレクターたちを唸らせた日本の技と心に迫る企画展。会場準備に追われながら中澤麻衣学芸員は、「初公開の作品を多数含めて、世界を魅了した日本の技と美をご覧いただきます」と話す。
会期中、8月29日(午後1時半~)に荒川正明氏(学習院大学教授・日本陶磁史)による講演「近代陶磁の魅力を追う―明治~大正期を中心に」を開催。要予約・先着30人、無料。電話052―931―0006にて受付中。また、第1・第3土曜日(いずれも午後1時半~)には同館学芸員によるギャラリートークが開かれる。事前申込不要。